韓国から見た「対馬」 片道900円で行ける海外ビーチリゾートの今

大亜高速海運の高速船「オーシャンフラワー号」

9月中旬、対馬を訪ねた。韓国からの客が激減していることは、盛んに報道されていたので承知していたが、そもそもそれまで、どうして多くの韓国の客が対馬を訪れていたのか、理由を知りたかった。それがわかれば、いま起きている一連の出来事に対する見方も、少しは変わるかもしれないと思ったのだ。

今回は、成田から釜山にLCCで飛んで、韓国側から船で対馬入りした。実は、福岡経由より、こちらのほうが安くて早い、お得な裏ルートであるということもあるが、韓国人客の動線に沿って旅してみることで、何か見えてこないだろうかという思いもあった。

対馬海峡を渡る釜山発の高速船は、時化で大いに揺れたが、1時間10分ほどで対馬北部の比田勝港に着いた。船内の日本人客はわずか4人だけだったが、200人以上の韓国人客が乗船していた。9月12日から韓国の中秋節にあたる秋夕(チュソク)の連休に入ったため、8月のお盆頃から減っていた渡航客が一時的に少し戻っていたのだ。

とはいえ、それまでは釜山から比田勝には5社の船会社が運航(うち1社のみ日系で、4社が韓国系)していたが、現在はJR九州の高速船「ビートル」と、韓国系2社が隔日で交互に運航するのみ。メディアの報じる「8割減」は事実で、連休明けはさらに客足は減少したという。

韓国からの団体ツアーの多かった対馬南部の厳原行きを運航していた韓国系2社も運休しており、韓国から国際航路で入れるのは、いまは比田勝港のみなのだ。

街の風景が変わった

せっかくなので、韓国系の大亜高速船を利用した。船内には休日を過ごすカップルや若い女性の2人組、子連れの家族や友人などのグループ客がいた。厳原とは違い、団体旅行客ではなく、メインの客層は個人客である。

比田勝港に着き、入国手続きを終えると、レンタカーを予約している韓国人客たちは送迎車に乗って、各レンタカー会社に向かった。旅慣れた彼らの足はレンタカーが基本なのだ。韓国人スタッフも常駐で、日本語でも説明してくれるが、利用者の大半は韓国人らしく、車内の表示もほぼハングルだった。


レンタカーの送迎車にはハングル文字が書かれている

レンタカーで対馬北部をドライブした。地元の観光物産協会が発行した日韓併記の「北部対馬観光案内図」が役に立ったが、対馬旅行ブームをつくった先駆け的存在として知られる韓国の旅行会社のHPで彼らがどこを訪ねているのか事前に調べていたので、そこを訪ねて回った。

天気のいい日には釜山市街が見えるという韓国展望所や、以前は若者たちでにぎわっていた三宇田ビーチ、マツキヨも併設した韓国人客が日本のお菓子や健康食品を購入するスーパーなどだ。

それらのスポットではちらほらと韓国人客を見かけたが、夏前までは大型バスやレンタカーで訪れた人々であふれていたのだろう。宿泊先は、9月10日に開業したばかりの東横イン比田勝。客室から眺める海辺の絶景が美しい、同チェーンでは珍しいリゾート型ホテルだが、韓国人客の姿は少なかった。
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文・写真=中村正人

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