男性の不妊は誰にでもありえる。映画「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」が伝える、当たり前じゃない世界

(c) 2019「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」製作委員会


「みんなそれぞれの立場で幸せがある」

──妊活や不妊治療中のカップルに対して、男性ができることはなんでしょうか。

入澤:監督がおっしゃった通り、男性って女性の気持ちをなかなか理解できないので寄り添えないんですよね。自分ができることを一生懸命がんばったり、治療が失敗したときに励ましてしまったりする男性が多い気がします。「次できるよ! 頑張ろう!」って。でも、女性には、まずは一緒に落ち込んで欲しいという気持ちがある人もいます。

「よし、じゃあ頑張ろう」って思うんですが、女性は裏ではあんなに苦しんでるっていうのを客観的に映画で見せてもらうことで、より理解が深まると思いますね。本当にみんなに観て欲しい作品ですね。

細川:事前にこんなに女性が辛いんだってわかると、ちょっと奥さんに優しくできるかもしれません。いきなり奥さんが怒る裏には実は大変なことがあるっていうのを事前に知っていないと、いきなり怒られたら、怒りで返したりしちゃうかもしれませんからね。

俺は奥さんに怒られて、彼女も大変なんだなと気づきました。でも、脚本を書いてるとわかるんですけどね、ヒキタ、これ言わないとやばいことになるぞっていう(笑)。ここちょっとちゃんとフォローしたほうがいいよとか、謝ったほうがいいよとか。でも、映画ではわかるんですが、普通に生活してるとわからなくなることがあります。

女性ってこんなに大変なんだというのを、大人の保健体育の教科書のように、この映画を観て知るのもいいかもしれません。そういう映画になっていると思います。


(c) 2019「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」製作委員会

──この映画を通して、細川監督が伝えたかったことはなんですか。

細川:まず、ヒキタさんだけを追いかけて、彼だけをモデルにするのはやめようと思いました。ヒキタさんだけに焦点をあてると、そりゃ作家だから時間も自由でいいよね、とか悲しくなっちゃうじゃないですか。朝も会社行かなくていいからねとか。

このテーマに対しては、いろいろな立場の人がいることに気を払いました。別につくりたくないけどどんどん妊娠してしまう人、子どもをいらないことを選んでいる人、つくろうと思えばつくれるけど別にいいんだっていう人、子どもを諦めた人、自然に平和に子どもができて幸せそうな人、子どもがいるのが当たり前になりすぎちゃってる人……。


子どもにまつわるさまざまな人が出てきているから、どこかしら感情移入や共感できると思います。みんなそれぞれがそれぞれの立場で幸せがあるよっていうのが伝わるようにしました。

「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」(配給:東急レクリエーション)は、10月4日(金)全国ロードショー。


左:入澤諒 右:細川徹

写真=井土亜梨沙

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