ティム・クックが「移民保護」を最高裁に嘆願、トランプに対抗

ティム・クックとトランプ大統領 by Getty Images

アップルCEOのティム・クックは10月2日、法廷への提出書類で、トランプ政権が進める不法移民の取締り計画を公然と非難した。米国ではオバマ前政権時代に、不法移民の強制送還を猶予する「DACA」措置が導入されたが、トランプはこれを撤回しようとしている。

DACAは、幼少期に移民の親に連れられて米国に不法入国し、そのまま育った若者に滞在許可を与えるものだ。このような若者たちは「ドリーマー」と呼ばれ、米国では約80万人のドリーマーが暮らしているとされる。アップルなどの大手テック企業も、多くのドリーマーたちを雇用している。

クックはアップルを代表して最高裁宛ての意見陳述書を提出した。文中で彼は、DACAの撤廃は耐え難いことであるとし、「当社の同僚の多くが会社を去ることになる」と述べた。さらに、これはモラルに反する行いだと主張した。

クックによると、アップルでは現在443人のドリーマーが働いており、2017年の250人から大幅に伸びている。今回の陳述書は、アップルで働く5人のドリーマーたちの、生い立ちや仕事についてもふれている。「彼らは全て逆境から這い上がり、偉大な成果をあげている」との記述もある。

トランプは2017年にDACAの無効化を決定したが、現状では最高裁の判断を待っている状態だ。

クックは以前から移民らを支援するスタンスをとっており、トランプのDACA無効化プランに対しては、アマゾンやマイクロソフトなどの大手テック企業らも反発の声をあげてきた。

クックは最近、トランプと面談し、中国製品への関税引き上げがいかにアップルのビジネスに悪影響を及ぼすかを説明していた。しかし、今回の陳述書はこれまでで最も激しい、トランプに対する反対声明と言える。

陳述書にはこう書かれている。「私たちが彼らを雇うのは、親切心や同情からではない。ドリーマーたちは、アップルのイノベーション戦略を現実のものにしてくれる存在だ。多様なバックグラウンドを持つ人々が集い、スキルや経験を持ち寄ることで、様々な困難を乗り越えていける」

最高裁の判断は、来年の夏に下される予定だ。

編集=上田裕資

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