ところで、「SHOE」は数字ではなく文字なので、現在の読取り装置では認識しない。従って、初めの5桁しか送達業務にとっては意味がない。そういうこともあり、この郵政局のパイロットプログラムそのものは成功しなかった。実際、グーグルマップに10022-SHOEと記入しても、このシューサロンを示してはくれない。
ところが、この「10022-SHOE」は、その後、サックス・フィフス・アベニューの高級靴のブランド名として使用され、定着した。また、同社のプレスリリースによれば、10年間で、このシューサロンの扱うデザイナーブランドは倍の110に増え、取り扱う靴も20万足に達している。
ナンバープレートの登録料で
また、舞台裏で誰がどういう駆け引きをしているのかはわからないが、アメリカは各地で、このジップコードのつけ方にさまざまな「変則技」を用いることで、固定資産税を高く徴収することがよくある。
たとえば、フェニックス市のなかにありながら、隣のリゾートゴルフ銀座、スコッツデールの郵便番号を使用している地域がある。人々はジップコードだけで、高級住宅かそうでないかの判断やイメージを持つので、この数字のマジックだけで地域の人気が上がり、地価が上がり、固定資産税も上がったりする。
ジップコードから離れると、実は、車のナンバープレートのオーダーメードのほうは、アメリカではすでに数10年の歴史があり、かなり一般的になっている。
たとえば、アベさんの自家用車なら、「Abe1」とか「Good Abe」などとつけることができる。桁数やら、スペース(文字間)を入れるという点について相当な自由度がある。そのぶん、陸運局は割高の車両登録料を徴収して儲けるというわけだ。
消費税が上がった。しかし、これでプライマリーバランスがとれるわけではない。慢性的な税収不足はまだまだ続く。ならば、このように柔軟な発想で、市民に痛みを強いない徴税方法もあるのだ。郵便番号を売ったり、特別なナンバープレートに料金を取ったりして。
連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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