ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

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昔、まだ日本に住んでいた頃、ブランドに対する意識が高い友人たちが、車に「品川ナンバー」や「横浜ナンバー」をつけたいがために、住民票を移すケースがよくあった。アメリカでも、同様の、地名に対するブランド意識を感じることはよくある。

金融マンならウォールストリートという場所に憧れるし、行政法を扱う超大手の弁護士事務所はホワイトハウスと同じストリート(ペンシルバニア・アベニュー)にオフィスを構え、名刺にその住所を刷り込みたいと願う。

実は、アメリカでは、そういう民間のブランドに対する意識を、行政がお金に替え、税収として納めさせるという手法がある。

ある百貨店のジップコード戦略

たとえば、郵便番号。アメリカではジップコードと呼ぶが、日本人にも人気の高級百貨店「サックス・フィフス・アベニュー」は、旗艦店をニューヨークはマンハッタンの五番街に置いている。

同社は約10年前、アマゾンなどのオンラインショップ台頭の脅威に抵抗すべく、デザイナーズブランドの靴売り場を新設し、「シューサロン」と呼ばれるその高級靴フロアに、従来の5割増の品数を展示するようにした。



その際、このシューサロンは、専用のジップコードを持つというブランド戦略を立てた。ジップコードは基本5桁なのだが、1983年からそのあとに4桁の細目識別番号を入れるという試みがされるようになった。5桁あれば郵便は届くが、少しでも早く、正確に届けるためには、もう4桁が、任意に使われるようになったのだ。

サックス・フィフス・アベニューは、10022という従来の5桁(旗艦店がある地域の番号)に加えて、その後にSHOE(靴)とつけたのだ。つまり、この靴売り場のジップコードは10022-SHOEとなり、もちろんこのシューサロンのためだけのものとなる。

同社の幹部たちが、この新サロンの開設にあたり、さまざまなブレインストーミングを交わして生まれたアイデアだが、「オンリーワン」のブランド戦略を、ジップコードにまで援用した積極性が、当時、話題を呼んだ。当然、「売り場」が専用のジップコードを持つこと自体、全米でも初めてのことだった。

もちろん、これには郵政局の許認可が必要だ。このアイデアを面白いと受け止めた同局は、本件をパイロットプログラムとして運用し、その後のニーズによっては、有料で「オーダーメード」のジップコードの発行をしようと検討したので、行政の発想の豊かさにも評価が高まった。

文=長野慶太

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