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2019.10.07 08:00

インド・ムンバイに育つスタートアップエコシステム

ムンバイのビジネスエリア(Shutterstock.com)

ムンバイのビジネスエリア(Shutterstock.com)

2018年10月、インドのナレンドラ・モディ首相が、日印首脳会談のため東京を訪れた際、両国の広範なデジタルパートナーシップがスタートした。以来、インドのスタートアップエコシステムと日本のVC(ベンチャーキャピタル)を結びつける交流は頻繁に行われている。

現在、評価額10億ドル以上で設立10年以内のベンチャー企業であるユニコーン企業は、全世界で300社以上。約半数がアメリカ、続く2位の中国が約3割を占め、3位はイギリス、4位がインドの順となっている(2019年1月、CB Insigts発表)。インド発のユニコーン企業は13社あり、日本のソフトバンクがそのうちの4社に出資している。

インドのスタートアップエコシステムが急速に発展している背景には、世界中で活躍するインド出身のエンジニアや起業家の多いことと、それらの人材が帰国後に、投資家やインキュベーター、アクセラレーターとして支援しているからだ。また、インド工科大学をはじめとして、アントレプレナーシップを教育する大学が23校あることにも大きく起因している。

私は9月4日に、そのトップ校であるインド工科大学ムンバイ校(Indian Institue of Technology Bombay:IITB)で、「シリコンバレーのアントレプレナーシップとイノベーション」についての講演をした。滞在中には起業家や投資家などとの交流もあり、現地のスタートアップ事情も見えてきた。

通常、インドのスタートアップと言えば、この国のシリコンバレーと呼ばれるバンガロールがクローズアップされるが、ムンバイの勢いもそれに勝るとも劣らない。これまで日本ではあまり語られることのなかったホットな現況について報告しよう。


ムンバイの街。滞在中はあいにくの雨天だった。

急成長するムンバイのスタートアップエコシステム

インドのスタートアップエコシステムは現在、世界では2番目に大きいものとして位置付けられている。このエコシステムの成長を促すことを趣旨として、モディ首相は、2016年1月に、「スタートアップインドアクションプラン」をスタートさせている。

インドでは2万を超えるスタートアップが、国内の経済と社会の課題に取り組み、雇用とスキルを生み出している。また、ムンバイで設立されたインドの主要IT企業が加盟する団体NASSCOMは、1万以上のスタートアップに対してイニシアチブを握っており、多くのインキュベーターを全国的に広げ、ユニコーン企業を生むべく支援を行っている。
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文=森若 幸次郎

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