「日本の東京大学や名古屋大学、九州大学などでもIITBの卒業生が働いています。ムンバイは、よく『maximum city』と呼ばれます。さまざまな人々に対して理解がある開かれた街で、誰のことも拒絶しない。いまやグローバルな都市として成長を続けています」(Chatterjee教授)
IITBをはじめ、インドの各都市にある工科系大学の周辺はイノベーションハブとなっており、アクセラレータープログラムの開発などを通してスタートアップ革命を促進し、大きな利益を生み出している。また、日本にある60以上の大学がインドのカウンターパートとしてスタートアップ支援を行っており、イノベーション創出に繋がることが期待されている。
インドのベンチャーキャピタル事情
インドに出かける前、東証一部上場企業InnotechのCVC(コーポレイトベンチャーキャピタル)を運営しているPrithwee Bhat氏から、インドの著名なVC、Blume Venturesの創業者でありマネージングパートナーのSanjay Nath氏を紹介してもらっていた。
ムンバイで、Nath氏と部下の2名のベンチャーキャピタリストと会ったが、部下の1人は、IITBの卒業生でインドでMBAを取得。もう1人は、オックスフォード大学の卒業で、2人ともテクノロジーに詳しい好青年だった。
Blume Venturesは、インドのアーリーステージのテクノロジー系スタートアップに投資している。投資対象の1つは、加速するフィンテック、教育テック、ヘルスケア、農業テックなどで、もう1つは、テックプロダクト、グローバルマーケット(アメリカ、東南アジア、日本、その他の地域)の課題を解決するプラットフォームの領域だ。
Nath氏と共同創業者であるKarthik Reddy氏は、ともにアメリカに長期滞在した経験があり、Nath氏はインドに帰国後、Indian Angel Networkやムンバイエンジェルズなどのメンバーとしてスタートアップ投資を開始した。
当時、著名なVCは、大きなグロースを求めてプライベートエクイティ投資をしていたが、Nath氏はアーリーステージに投資することでスタートアップ支援ができると確信し、2010年にBlume Venturesを創業。それから9年間で20社を超えるエグジットを生み出し、インドを代表するVCとなった。
「地域によってスタートアップの種類に違いがあるのがインドの魅力です。ボリウッドで有名なエンターテイメントの都で、ファイナンスの中心地でもあるムンバイからは、フィンテック系やメディア系が生まれる傾向にあります。IITBから生まれるテクノロジー系のスタートアップも目立ちます」とNath氏は語る。
他の地域に関して言えば、デリーでは、消費者スタートアップから電子商取引/小売/マーケットプレース、さらに技術に重点を置いたチームに至るまで、幅広いジャンルが盛んで、バンガロールは、AI、ML、ディープラーニングに関するスタートアップが多い。ハイデラバードやチェンナイ、ケララ州などの南インドのハブとの連携も良好だという。
またNath氏は、「インドの起業家は初めからグローバル志向だ」と、その特徴を語った。