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2019.10.02

ソフトバンクの「1兆円」投資、回収に必要なWeWorkの企業価値

ソフトバンク 孫正義 by Gettyimages

シェアオフィス事業を手がける「ウィーワーク(WeWork)」のIPO計画がとん挫して以降、同社の最大の出資元であるソフトバンクには、厳しい目が注がれている。ソフトバンクが投資を回収するために必要なウィーワークの企業価値は、以前の予想を上回ることが明らかになった。

ソフトバンクの投資が損益分岐点に達するために必要なウィーワークの企業価値は、240億ドル(約2.6兆円)であるとサンフォード・C・バーンスタインのアナリスト、クリス・レーンは分析した。ソフトバンクのウィーワークへの直接出資額は、約75億ドルにのぼる。この金額は来年に予定されている追加出資の15億ドルや、既に出資済みのウィーワークの海外の子会社向けの16億ドルを除外したものだ。

ソフトバンクと傘下のビジョンファンドは、1株あたり平均65.8ドルで、1億1400万株のウィーワーク株を取得していたとレーンは分析した。レーンの試算では、仮にウィーワークの企業価値が1月の470億ドルを維持できていれば、ソフトバンクの含み益は70億ドルに達していたという。

ウィーワークが企業価値200億ドルで上場した場合、ソフトバンクは13億ドルを失っていたという。さらに、企業価値が150億ドルであれば、損失額は38億ドルに膨らんでいたことになる。

これらの試算をもとにレーンは、ソフトバンクが利益を得るために必要な、ウィーワークのIPO時の企業価値の最低ラインは250億ドルであると分析した。

ソフトバンクは累計で110億ドル(約1.2兆円)近くをウィーワークに出資していた。同社が今年1月に出資を行った時点の、ウィーワークの企業価値は470億ドルだった。しかし、その後、ウィーワークのビジネスモデルへの懸念が高まり、乱れた企業ガバナンスが報じられる中で、評価は急激に低下した。

ウィーワークは評価額を最低で100億ドルにまで引き下げて、IPOを実施しようとしたが、その後、米証券取引委員会(SEC)に上場計画の撤回を申し入れた。

株主からの強い非難を受けてウィーワーク共同創業者のアダム・ニューマンは、CEOを辞任し、経営を引き継いだ共同CEOのアーティー・ミンソンとセバスチャン・ガニングハムらは、コスト削減や新たな資金調達の動きを進めている。

ウィーワークは年内のIPOは断念したものの、「将来的な上場を視野に入れつつ、事業を立て直していく」と2人の共同CEOらは述べている。

編集=上田裕資

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