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デル、HOYAなどのグローバル企業の経営トップを務め、大幅な業績向上に貢献、プロの経営者として世界にその勇名を轟かせる浜田宏。15年には住宅ローン専門の金融機関として知られるARUHIの代表取締役に就任。その経営手腕は健在で、同社は就任後わずか2年半で東証一部上場を実現させた。サンダーバードグローバル経営大学院の後輩で、本誌副編集長を務める谷本友香が、これからの時代に求められるリーダー像について、浜田に話を聞いた。


サンダーバードの華麗なる復活劇が世界に与えたインパクト

谷本有香(以下谷本):サンダーバードグローバル経営大学院のアラムナイ(卒業生)ネットワークは、ビジネスマネジメントやイノベーティブな活動、社会貢献などにおいて世界トップクラスの評価を得ていますが、浜田宏さんの存在なくして現在の成功はなかったでしょう。先月、東京で開催された「サンダーバードグローバルリユニオン2019」には、私もOGとして参加しましたが、改めて浜田さんの強烈なリーダーシップを肌で感じました。浜田さんが壇上でスピーチを始めたその瞬間から会場全体の空気が一変し、一つひとつのメッセージに誰もが歓声を上げて応える。本当に感動しましたし、こんな素敵な日本人が先輩であることを誇らしく思いました。

浜田宏(以下浜田):もともと人を笑わせるのが好きだし、大学時代には演劇部に所属していたので、自分を表現するのが得意なだけですよ。特に頭がいいわけでもないし、根気もない(笑)。元気だけが取り柄の人間ですから。


9月14日に東京で開催された「Thunderbird Global Reunion 2019」の様子。

谷本: いえいえ、ご謙遜を。OGとしての質問なのですが、そもそも日本人の入学者数が減り続いていたサンダーバードの再建に乗り出したきっかけは何だったのでしょうか。

浜田:2011年にフェニックスで開催されたサンダーバードのグローバルフォーラムにスピーカーとして招かれ、久しぶりにたくさんの卒業生と話しました。今日の自分があるのは、この学校のお蔭だという感謝の気持ちが芽生えたのと同時に、学校が経済的に苦境に立たされていることも知りました。実はもう一つ問題があって、4万5千人の卒業生のまとまりもありませんでした。素晴らしい学校なのだから、みんなをひとつにまとめ、もう一度サンダーバードを輝かせたいと思ったのです。世界では金融危機、対立とテロリズムなど不安定な状態が続き、グローバリゼーションの危機が叫ばれ始めた頃です。新たな枠組みをつくらなければ世界はさらに混迷を深めていくだろうと容易に予測がつきました。サンダーバードが国際的なビジネススクールとして活性化されれば、新たなリーダーが次々と生まれる。新しいグローバリゼーションを先導するリーディングスクールとしての存在感を示せば、それこそ世の中が変わるのではないかと信じて評議委員に名を連ねることにしました。

谷本:そのためには、まずサンダーバードの財政を健全化させなければなりません。どういうプロジェクトを始動させたのですか。

浜田 時の流れもあり、さまざまなことを模索していて少々時間は掛かりましたが、16年にスペインのマヨルカ島で行われた評議委員会がひとつの転機になりました。そこで私は、自分が中心になって東京オフィスをつくり、サンダーバードの日本におけるプレゼンスを高めたいと宣言したのです。学生募集と寄付金集め、企業へのプログラム紹介等をメインにしたセールス&マーケティングのオフィスで、このモデルが成功すれば、世界中に同様のオフィスを作り、グローバルハブのネットワークを構築することができます。少しずつ賛同者が集まり、最初に私が1千万円を寄付すると、仲間たちが3カ月でさらに1千万円を超える資金を出してくれた。みんなのお蔭で東京オフィスを立ち上げることができました。



谷本:実際に東京オフィスは大成功を収め、それがきっかけとなってサンダーバードはV字回復を果たしたわけですね。世界中の多くのビジネススクールがじり貧状態のなかで、このプロジェクトは最高のロールモデルとなりました。

浜田:サンダーバードの歴史上はじめて、ひとりの卒業生が立ち上げたオフィスだったので、インパクトもそれなりにあったのでしょう。その後、ソウル、ジャカルタにもオフィスが開設され、これから世界中の多くの都市でサンダーバードのオフィスが立ち上がることも決まっています。

国際感覚を身につけた日本人こそが、真のダイバーシティを推進する

谷本:その功績が認められて、サンダーバード評議委員会の議長に推薦されたわけですね。先ほどサンダーバードを、新しいグローバリゼーションを発信する拠点にしたいと言われていましたが、どのような構想なのでしょうか。

浜田:インターネットやAIなどテクノロジーが発達すれば、世界から対立と差別がなくなり、人々はもっと豊かになれると信じられてきましたが、現実はどうでしょう。ひとつの国の中で貧富の差は拡大していますし、開発途上国の貧困の問題も解決されていません。アメリカもフェイクニュースや選挙妨害など、むしろ国民の対立は深まっている。テクノロジーの進化やナショナリズムを否定しても意味がないので、折り合いをつけてビジネスをグローバルに展開し、世界の課題を解決していかなければいけません。

谷本:日本は欧米型の強欲的な資本主義とは一線を画していると思われます。日本的経営の哲学や、リーダーシップがこれからの世界に貢献できるのではないでしょうか。

浜田:そのためには、まず、日本人経営者のマインドが完全に変わる必要があるでしょう。残念ながら、世界で評価されている日本人経営者はほんの一握りしかいないのが現実です。国際フォーラムに顔を出しても課題解決に向けた具体性のある将来像を示せず、大勢の社員を連れてゴルフや観光をしているというのが、海外の投資家から見た日本人の経営者のイメージなのです。持続的成長だ、雇用を大切にしようと訴えたところで相手にされるわけがありません。日本人経営者は、まずは個人としての強いリーダーシップを発揮して、ビジョンを語り、果敢にアクションを取るべきなのです。

谷本:確かにその通りです。あえて言いますけど、日本に潜在能力があるとすれば、どんなことを行動指針にして何を世界に訴えていくべきでしょうか。



浜田:ダイバーシティはひとつのキーワードになるかもしれません。いま、私が経営しているARUHIには、70歳以上の社員、外国人、働くママなど実に多様な社員が働いています。気力、知力、体力さえあれば、国籍、年齢、性別などまったく関係なく、誰もが自由闊達に課題と向き合い、挑戦できる風土が弊社にはあります。実は、私たちARUHIが特別なのではなく、そういう会社は日本で増えているのではないでしょうか。

世界を注意深く見ると、いまなお人種差別や、学歴主義、宗教差別といった偏見が色濃く残っています。一部の古い体質の企業を除けば、日本だと、一度会社に入れば、たとえ一流大卒の肩書をもっていても、本人に実力がなければ組織をリードしていくことはできないようになってきています。それに日本人の多くは人種差別を嫌いますよね。真の意味でダイバーシティを推進し、新たなグローバリゼーションを実現できるのは日本人かもしれません。そういう意味でも、日本の若者たちにはどんどん海外に出て行ってもらって、国際感覚を養ってほしい。

谷本:浜田さんが最初に経営に携わったのはデル・ジャパン時代ですから、20年前になりますよね。当時とはだいぶ経営方法も変わったと思います。時代が明らかにテック系になってきましたが、これからの経営者に求められる資質は何だとお考えですか。

浜田:マーケティングとテクノロジーがもたらすパワーに造詣があり、個としての人生哲学があり、夢と希望を持ち圧倒的なエネルギーに満ちている人材です。人から嫌われてもいいし、ミスをしてもいい。困難にぶち当たっても絶対にギブアップせず、目標に向かって突き進んでいく。経営者としてではなく、人間として成長していこうと考えられる人は将来有望だと思います。




はまだ・ひろし◎1959年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。海運会社に勤務した後、AIG(現メットライフ生命保険)を経て、米アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院に留学、国際経営学修士課程修了。米国クラーク・コンサルティング・グループを経て、デル・コンピュータ(現デル)に入社。2000年、同社代表取締役社長および同社アメリカ本社副社長を務める。その後、リヴァンプ代表パートナー、HOYA・COOなどを歴任。15年5月、ARUHI代表取締役会長CEOに就任、同年9月より代表取締役会長兼社長CEO兼COO。

Promoted by ARUHI / Text by Hiroshi Shinohara / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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