助成や寄付のイメージを超える。まちづくりにおけるNPOの可能性


どうしたら、企業、行政、NPOがフラットにつながり、信頼しあい、価値のある継続可能なプロジェクトを生み出していけるのか。「渋谷をつなげる30人」でも苦難の連続だった。しかし、「全てのセクターと人がフラットにつながっていること」こそが全ての起点であると信じて取り組むことで、複数のプロジェクトで関係性の変化も見えてきた。

目標を共有するパートナーになる

NPOを従来のように「寄付先」として見るのではなく、戦略的事業パートナーとして位置づけることで、新たな価値を創造している例を紹介したい。

落書き消しプロジェクトの中で、ビームスはオリジナルのユニフォームを製作した。作業をする気持ちをアゲてくれるおしゃれなデザインであるだけでなく、落書きを消すことに伴う汚れが勲章となるよう真っ白なコートだ。

当初、このコートをNPOに寄付したり、あるいは大手企業が買い取り、無料で配布することも検討された。しかし、最終的にこのチームは、NPOをより事業継続可能なものにしていくために、ビームスがNPOに売り、そのNPOが販売していくという決断をした。



また、東急不動産は、NPO法人greenbirdと連携し、推進する再開発エリア内の建物を様々な文化を発信するスペースとして生まれ変わらせた。原宿の情報発信拠点および地域の交流スペース「subaCO」も同様に、NPOを戦略的事業パートナーとして位置づけている。



自社ビル1Fにカフェを併設するボッシュは、NPO法人グリーンズと連携し、定期的に「green drinks Shibuya」という渋谷区に関わる様々なセクターの人々が集うまちづくりイベントを開催。カフェの活性化やネットワークの拡大を通じ事業の領域を拡大している。

行政とNPOにも「助成」でないつながりを

落書き消しプロジェクトでは、落書き問題を所管する渋谷区環境政策課の大きな理解と協力が欠かせない。しかし注目すべきは、現在、この活動に新たな区の予算は使われていないということだ。一方で、区に連絡のあった落書きに関する情報や苦情はすぐさまNPOと共有され、必要に応じ、落書き消しがイベントとして開催される。

このようなNPOと行政の「健全な癒着」は現場の迅速な課題解決のためには有効だ。両者を課題解決パートナーとして連携させていくためには、制度の政策化も視野に入れると未来の選択肢は増えると感じている。

行政、企業、NPOなどセクターを越えて目標や成果を共有し、ひとつの問題の解決を目指すことを「コレクティブ・インパクト」というが、その推進は、NPOの存在なくして成立しない。それには、企業や行政の変化も必要だが、NPO自体も、積極的に地域事業プロデューサーとしての役割を担えるよう"ムラ社会"を飛び出していくことが必要だ。


渋谷のcafe1886 at Boschで行われているまちづくりイベント

セクターの枠を超えてフラットな人的ネットワークを拡大し、リソースのシェアや企画づくりを行うことで、戦略的事業パートナーシップを構築し、社会課題解決に取り組んでいく。そのコレクティブ・インパクトのハブになることが、NPOの真の姿だと信じている。

連載:渋谷区から始めるコレクティブ・インパクト
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文=加生健太郎

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