助成や寄付のイメージを超える。まちづくりにおけるNPOの可能性


マンパワー不足、資金不足、超多忙

どんな組織にも当てはまることかもしれないが、そもそもNPOは、「お金のためではないこと」を事業化するために日々努力を重ねている。そして、圧倒的に小規模で運営していることが多い。

そんな中、既存事業を行いながら、異業種や異なるセクターと共に新規事業を作っていくことは、困難を極める。「渋谷をつなげる30人」では、最終的にプログラムやチーム毎のミーティングにも参加ができなくなり、本来果たしてほしい役割を全うできないということも多々見られた。

仮に小さな社会実験やプロトタイプを実行できそうな状況になっても、そこから馬力をもって本業と同等に推進していく余力を持つNPOは少ないのが現実だ。

行政から「助成先」と捉えられがち

行政とNPOは、助成金などをめぐりどうしても受発注を伴う利害関係者になる場面も多く、相互に腹を割って話す仲にはなりにくいのが現状だ。

本来であれば、志や現場やデータを共にした上で、同志として行政にできない部分はNPOが、NPOができない部分は行政が担い、共に社会課題へのソリューションを実行、検証していくことが望ましい。

さらに言えば、社会課題解決というミッションのため、行政の事業設計や予算獲得の際、特例としてNPOとは「健全な癒着」を推進しても良いのでは、と個人的には感じるが、既存の法令や公平性の観点からはすぐの実現は難しいだろう。


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企業から「組んでも儲からない」と思われる

企業のNPO窓口は、CSR担当であることが多いだろう。企業側は善意や責任感のもと、NPOへの寄付やその他サポートのための予算を捻出はしているが、全社的にみると、「NPOにはCSRとして寄付=儲からなくてもイメージアップになればいいのでは」と考えてしまいがちだ。

本来であれば、そのNPOが抱える社会課題のその先には、本当に困っている人が具体的に存在しており、共にソーシャルビジネスを構想するくらいの動きがあっても良いのだが、「社会課題は儲からない」「社会課題は行政が対応するもの」という考えから、企業がそこまで本気で動くことは少ない。
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文=加生健太郎

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