助成や寄付のイメージを超える。まちづくりにおけるNPOの可能性

NPO(非営利団体)について、世間はどのようなイメージをお持ちだろうか。

馴染みのない人は、ぼんやりと「ボランティアですよね?」「お金儲けしちゃいけないんですよね?」という第一印象を持たれるのではないだろうか。あるいは「寄付する先」や「慈善活動の場」として思い浮かべる人もいると思う。

振り返ると、日本におけるNPOは、1995年の阪神淡路大震災時に市民活動やボランティアが注目を集めたことで、機運が醸成された。その後、1998年に「特定非営利活動促進法」が制定。いわゆるNPO法人が法制度化されたことで、行政や企業が担えない「儲けにならないけど、取り組まなくてはならない社会課題分野」の解決を期待される存在となった。

私自身は、学生だった2000年にNPOの立ち上げや運営に携わった。また、学友であり、この業界のリーダーでもある駒崎弘樹氏が、病児保育事業をする認定NPO法人フローレンスを立ち上げた2005年にプロボノとして関わったり、高校生へのキャリア教育支援等を行う認定NPO法人カタリバとビジネスユニットを運営したりした。

当時、「NPO=高齢者」というイメージがあった中で、20代でNPOを立ち上げた彼らは世間的にも注目を浴びたし、「NPOではなくソーシャルベンチャー」と捉えられ始めていた。

またそこから派生して、「寄付文化」も醸成された。欧米では馴染みがあるものの、日本では長らく理解が進んでいなかった文化だが、東日本大震災やクラウドファンディングなどのインフラの整備を契機に身近なものになっていった。


東日本大震災から半年後に被災地を訪れたボランティアたち(2011年9月11日撮影、Getty Images)

馴染みのないNPOという存在

私の場合は、NPOの起業を当たり前のように見てきたり、仕事柄、行政とも比較的、距離近く接してきたが、一般的に企業、行政、NPOがフラットな出会い方(所属、肩書、建前だけではなく、本音で話せる人間と人間としての出会い)をする場は少ない。

企業、行政、NPOというセクターを超えた30人からなる渋谷区のまちづくりプログラム「渋谷をつなげる30人」を運営していく中でも、企業や行政のメンバーのほとんどが「NPOと接するのは初めて」という状態であり、NPO同士の連携が取れていない場面にも多く遭遇した。

同プログラムにおいては、ソーシャルマインドが高く、環境や子育て、キャリア支援など社会課題の第一線に取り組むNPOがセクター連携促進の要を担うと思っていただけに当初は頭を抱えた。

なぜNPOは馴染みのない存在になりがちで、それによってどんな課題が起こるのか。いくつか代表的なものをあげてみたい。
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文=加生健太郎

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