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資生堂 代表取締役社長兼CEO 魚谷雅彦 

「資生堂は、曇りのあるダイヤモンド。いいものを持っているから、曇りを取り除けば、必ずまた輝く自信があった」

2013年3月期、資生堂は8年ぶりの最終赤字に。事業を再び成長軌道に乗せるべく舵取りを託されたのが、日本コカ・コーラで社長を務めた“プロ経営者”の魚谷雅彦だ。

魚谷は14年、同社史上初めて外部招聘で役員を経ずに社長に就任した。期待に応えて、20年12月期に達成予定だった売り上げ1兆円を3年前倒し、営業利益1000億円を2年前倒しで成し遂げている。はたして、曇ったダイヤをどうやって磨き直したのだろうか。

社長就任後、社員向けの方針説明会で質問を募ったところ、若い女性が手を挙げた。「これまで何回も改革に取り組んでうまくいかなかったのに、外から社長がやってきて、本当に改革できるのか」。大企業でトップに直言するのは勇気が要るが、そう言わずにいられないほど社員のフラストレーションは高まっていた。

普通なら崩壊寸前の危機的状況だと考えるだろう。しかし、魚谷はこれを良いサインと受け止めた。「人はみんな心のどこかで、会社のために役立ちたいという思いを持って働いています。資生堂の社員も、そうでした。組織の文化や制度に課題があって自由に力を発揮できていませんでしたが、マグマは溜まっていた。あとはその力を解放させてあげればいい」

会社は社員の可能性を信じて、その力を最大限に発揮できる環境を整える。この“ピープルファースト”戦略で、ダイヤを光らせようとしたのだ。

特にこだわったのは、現場の声の吸い上げだ。魚谷は社長に就任以来、社員の声を聞くために現場に通うことを自分に課している。5年半で言葉を交わした社員は、国内海外を含め延べ7万5000人。社員とのコミュニケーションが単なるガス抜きに終わるケースも多いが、魚谷は聞くだけに留まらない。「商品サンプルがあるとお客様に喜んでもらえる」など、聞いて納得すれば、その場で即決して予算をつける。

「お金はかかりますよ。ただ、分母が増えても、それ以上に分子が増えればいい。僕は投資を続けることにコミットするから、みんなには分子を大きくすることをがんばってもらう。経営者と社員の相互のコミットメントが、会社を強くするんです」

文=村上敬 写真=間仲宇

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