UFOキャッチャーから学べ。子どもを詐欺から守る金融教育

iChzigo / Shutterstock.com


期待値の考え方と人間の性

ほとんどのものに期待値があり、特にオフィシャルにお金を払って何かしらのリターンを求めるものでは、ある程度計算ができるようになっている。

たとえば、宝くじは還元率が46%なので、運営側(胴元)が54%を持っていくことが決まっている。競馬や競輪、競艇は還元率が75%と宝くじよりは多くなっている。集まった額から胴元が持っていった残額をゲームの参加者が奪い合うゲームであり、その残額を基に参加者数や各賞に与えられる報酬額を計算して期待値が算出される。

このように考えると、そもそも集まった額の多くが胴元に持っていかれて、残った額を参加者で奪い合うゲームなのだから、基本的には負けることが前提となるのはすぐに分かるだろう。UFOキャッチャーもビジネスである以上、原価割れするような結果は基本的には起こらないように設定されるわけだから、数字上はそう簡単にやるべきではないのだ。

しかし、子どもには全てを数字で説明する気はない。人間というのは損得勘定だけできれいに行動できないからだ。期待値は低くても、そのゲームを楽しみ、ドキドキしたり、そもそもプレイしている空気感が好きなのであれば、その効能を数字に割り戻せば、実感値としての期待値は十分に高い事になるからだ。

日頃から数字を意識させよう

さて、少し複雑な話にもなったが、要は何かリターンを提示されたら、その数字が諸条件から算出される期待値と照らし合わせて不自然さがないかを瞬時に判断する能力を子どものころから付けようということである。

警察庁の資料によれば、昨年1年間における特殊詐欺の被害額は363.9億円だ。とんでもない額が毎年詐欺によって奪い取られていっている訳だが、その手口の多くはそこまで複雑ではないと思う。

実際に何件かの実例を聞いたことがあるが、冷静に考えればあり得ない話ばかりだった。日頃から数字を基に考える習慣を身に付けさせることと、さまざまな分野の相場観、つまり平均値や中央値を知っておくことが重要なのだろう。

たとえば、総務省統計局が発表している就業構造基本調査をみれば、日本の世帯所得の平均値は504万円。しかし最も多いのは所得200万円台で,中央値(累積相対度数=50)は400万円ちょっとだ。これを12で割れば、毎月どれぐらい稼げるものなのかが分かるだろう。その感覚があれば、スマホに表示される広告をタップするだけで、数万円稼げるというのはあり得ないことはすぐ分かるのだ。

このように、日頃から数字を意識させるために、親である私は情報を収集し、ことあるごとに子どもたちに一般的にはこれはいくらぐらいなんだよ、とう相場観を与えている。とはいえ、最近は口うるさい父親が嫌がられている気もしているため、私個人としては別の問題が生じてしまっているのもまた事実である。

連載:0歳からの「お金の話」
過去記事はこちら>>

文=森永康平

ForbesBrandVoice

人気記事