ビジネス

2019.10.01

サラリーマンでも発信者になれる。企業内インフルエンサーを歓迎せよ

徳力基彦氏(写真=小田駿一)


──インフルエンサーの定義をどう考えますか。

インフルエンサーって、僕の中では、あくまで「影響力のある人」です。でも多分、日本ではインフルエンサーはダブルミーニング、トリプルミーニングになってきていますね。インフルエンサービジネスのために自分でインフルエンサーと名乗る方も増えましたし、インフルエンサー=有名人と考える人もいると思うんですよね。そこは結構、混乱している原因にもなっていると思うんですよね。

インフルエンサーという言葉を僕がかなり意識しだしたのは、ソーシャルメディアブームの前の2009年に刊行された本田哲也さんの著書『戦略PR』(アスキー新書)からです。本田さんはインフルエンサーを「PRにおける重要なオプション」として紹介されていました。本書の中ではインフルエンサーって、業界のご意見、専門家的な人を指していました。そういう人をPRで活用せよという話が、僕の初期のインフルエンサーのイメージだったんですよ。

僕が当時書いた『戦略PR』の書評にも、「お墨付き感を出すためのインフルエンサーの活用」と書いています。例えば「キシリトール」についてアピールしようと思ったら歯医者さんをインフルエンサーとして起用せよ、というのが、もともと僕が遭遇したインフルエンサーというキーワードなんですよね。PRにおいて、専門家にリリースの監修やお墨付きをいただくことが効果的だという意味合いでした。今の使われ方とは全然違いますね。当然、このとき、インフルエンサーマーケティングという概念もありませんでした。

ツイッターのフォロワー数が影響力を可視化

その後ツイッターの出現が大きく、現在のような使われ方になっていったと考えられます。印象的だったのはやはり、ツイッターによりフォロワー数が可視化されたことです。当時、ブログはアクセス数やページビューぐらいしか指標がなく、それはあくまで外からは分かりません。どのブログに影響力があるのかは、書いてる本人にしか分からないんです。

それがツイッターでは、フォロワー数で一目瞭然で影響力が想像できる。大企業のアカウントより個人のフォロワー数が多い、といったことが初めて分かるようになったのが、大きな分岐点ですね。

それまではテレビに出ているから影響力があるんだろう、とか、メディアに取材されているから影響力があるんだろう、という感じだったと思います。でも、同じテレビに出ている芸能人でも本当は影響力が大きいかどうかは人によって全く違いますよね。

フォロワー数により、影響力が想像しやすくなったことによって、インフルエンサーという存在が認められるようになったんだと思います。

例えば、津田大介さんはIT業界では知る人ぞ知るライターだったんですけど、ツイッターでフォロワー数が可視化されたことによって、時の人になりました。テレビに頻繁に出られるようにもなりました。そこはやはりネット業界から見た、インフルエンサーという現象の大きな分岐点だったと思います。
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構成=林亜季、写真=小田駿一

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