ビジネス

2019.10.01

サラリーマンでも発信者になれる。企業内インフルエンサーを歓迎せよ

徳力基彦氏(写真=小田駿一)


表現方法では、テキストから画像、動画への流れは止まらないと思います。人間のコミュニケーションはそもそもリアルな動画コミュニケーションがメインです。テキストのコミュニケーションは実は一番、高尚で難しいんですよね。

例えば「おまえ、バカじゃねえの」と文字にした瞬間に、先輩から後輩への愛情に満ちた言葉なのか、ただの罵倒なのかが分からなくなるんですよね。リアルでは映像、表情、声のトーンなど、五感でコミュニケーションをしていますから、文字のコミュニケーションは実は一番、難しいんです。

一方で文字のコミュニケーションは、受け取る側が時間があまりかからないというメリットがあります。動画だと、僕が延々と1時間話したら、相手も1時間、拘束されます。でも文章のコミュニケーションだと、僕がいくら長文で書こうと、相手は速読してもいいし、適当に気になるとこだけ読んでもいいし、結論しか読まないという選択もできるわけですよね。

ビジネスのコミュニケーションにおいてはテキストは今のところまだ最強です。やはりビジネスパーソンはこれから改めて、テキストのコミュニケーションをちゃんと考えなきゃいけないはずなんです。

インフルエンサーといっても、ユーチューブに向いているコンテンツもあれば、インスタグラムに向いてるコンテンツもあるし、ツイッターやブログに向いているコンテンツもあると思うんですよね。これからさらにプラットフォームごとにコンテンツの特性が分かれていくと思いますね。

──個人の生き方も変わっていきますね。

今回のインフルエンサー特集で勘違いしないでほしいと思うのは、「TOP INFLUENCER 50」としてロールモデルを示すという意味ではすごく意味があると思うのですが、一方で、「この人たちはすご過ぎるから、私はなれない。関係ない」と思ってしまうのは、すごくもったいないということです。

今回の特集を通じて、自分もちょっとネットでの情報発信にチャレンジしようかなと思ってもらえる人が増えるといいなと思います。

どんな人でも周囲に影響を与えられることはあるし、それによって、周囲の人以外ともつながれるかもしれないのがソーシャルメディアの面白さです。ビジネスパーソンも、自分の仕事の領域において、自分がちょっとだけ、「組織の論理」じゃなくて「個人の論理」でも発言できるようになれば、他の同僚に比べて社会へのネットワークが広がっていく。そしてこれは所属会社にとっても意味があることです。

今回「TOP INFLUENCER 50」に選ばれた方々も、信じられないほどの積み重ねからハプニングが起こって影響力を獲得したケースが多いはずです。ソーシャルメディアで発信すること自体は誰でもできますが、発信する中身がないといけない。やりたいこと、伝えたいことがあるということが重要だと思います。

昔のベンチャー企業は、お金を集めることがうまい人ではないと、なかなか始められなかったと思います。今のスタートアップはアイデアがあって、エネルギーが見えると、投資家も投資しやすくなるので、ソーシャルメディアでインフルエンサー的な存在になってから起業する人も多いですよね。個人が新しいことを始めやすくなっている時代だといえます。
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構成=林亜季、写真=小田駿一

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