ビジネス

2019.10.01

サラリーマンでも発信者になれる。企業内インフルエンサーを歓迎せよ

徳力基彦氏(写真=小田駿一)


──ツイッターの登場以降の流れについてはどう見ていますか。

ツイッターの後に、フェイスブックが来て、ブームになりましたが、インフルエンサーマーケティングという言葉が本当にビジネスとして成立するようになったのは、インスタグラムからかなと思います。

ツイッターはまだ匿名アカウントも多いですが、インスタグラムによって、芸能人やモデルも含めて実名でアカウントを開設する人が増えたのは大きかったと思います。

インスタグラムは写真や動画の表現が中心なので、ビジネスとして成立しやすいんですよね。ちゃんとビジネスとしてスキームが組まれるようになって、インフルエンサービジネスが確立されたのがこの数年だと思います。ブログも含めてプラットフォームが増え、ソーシャルメディアを使う人が増えてきたことによって、個人の投稿によって影響力があるというのが確認されるようになりました。

なお、本当の意味でインフルエンサーとして一番、影響力があるのは今、ユーチューバーだと思います。ユーチューバーは、インフルエンサーと言うよりはユーチューバーと呼ばれることが多いので特別ではありますが。

そういう意味では、インスタグラムよりも前に、ユーチューバーが本当の意味での、最初のインフルエンサービジネスの火付け役と言えますね。

HIKAKINさんは非常に象徴的な成功例ですよね。無名の若者が、ヒューマンビートボックスの動画をユーチューブに上げ続けていたら、気が付いたら時代の方が追い付いてきて、大量にファンがついた。いまや、HIKAKINさんに仕事を頼むと、実際に売り上げにも好影響があるという事例もたくさんできてきました。個人のメディア化の最大の成功事例だと思います。

一方で、今、インフルエンサーマーケティングという言葉は、一部でインスタグラマーのフォロワー数にあわせてお金を払って写真を投稿してもらうこと、みたいになってしまっていますが、それは全く本質では無いと思います。

インフルエンサーは、お金をもらって、やらせやステマで稼いでいるのではという指摘もなかなか消えませんが、ファンが信頼しているから影響力があるのであって、そういうステマに手を出す「自称インフルエンサー」は長い目で見ると消えていくと思います。

「組織の時代」から「個人の時代」へ

マスメディアの時代、インターネット以前を「組織の時代」と定義するのであれば、インターネット、特にソーシャルメディアの時代はやはり「個人の時代」になってきているのは間違いないと思います。

「組織の時代」においては、例えば「組織の論理」からすると、ある程度、個人が我慢しなくてはいけないシチュエーションや個人が犠牲になるシーンは当然、今までも多くあったと思います。

でもその分、組織に所属していることの価値は非常に大きい時代でしたよね。個人として自由に発言することが許されてなくても、終身雇用だし、年功序列だし、組織に忠誠を誓うことで、個人にもメリットが多くあったんです。

それが、「個人の時代」になり、組織の時代の価値観と、個人の時代の価値観のギャップが、様々なところで問題になりつつあります。勝手に個人が不適切な動画をアップしたり、差別的な発言をしたことが会社の問題とされてしまったり、とかですね。

一方で、個人が情報発信できるようになるというのはすごく意味があると思います。みんなが個人として影響力を持てるようになった時代だと考えた方がいいですね。大なり小なり、皆さんソーシャルメディアを使っていれば、「プチインフルエンサー」ではあると思うんです。
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構成=林亜季、写真=小田駿一

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