「忘れられる権利」訴訟でグーグルが勝利、適用はEU圏限定に

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欧州連合(EU)は「忘れられる権利」と呼ばれる検索結果の制限をEU法で義務づけているが、新たな司法判断により、グーグルはこの義務の遂行を、EU域外で強制されないことになった。

欧州司法裁判所(ECJ)は9月24日、グーグルに対し欧州の検索結果から、忘れられる権利に沿わない検索結果やリンクを除外するよう求めたが、欧州以外でこの義務に従う必要は無いと宣言した。

今回の法廷闘争の発端は、2015年にさかのぼる。当時、フランスのデータ保護当局CNILは、グーグルに対しEU法に反する検索結果を、世界全体の検索結果から排除するよう要請した。

しかし、グーグルはその後、地域ごとに検索結果を変える機能を導入し、欧州では「忘れられる権利」を遵守するが、それ以外の地域では、EUの規制に従う必要はないと主張していた。

CNILはグーグルに罰金10万ユーロ(約1180万円)の支払いを求めていたが、グーグルが欧州司法裁判所に訴えた結果、グーグル側の勝利となる判決が下された。ECJはグーグルが今後もEU圏内のユーザーが、非EU国と同じ検索結果にアクセスできない措置を講じることを求めている。

ECJで今回の裁判を担当したMaciej Szpunarは「EU圏以外での検索結果は、忘れられる権利の対象から除外される」と述べた。

忘れられる権利は、ユーザーのプライバシーを保護するために2014年に導入された制度で、公共の利益にあたらない自身に関する情報へのリンクを削除することを、グーグルなどの検索企業に要求していた。

今回のECJの決定は、世界の常識に沿うものと言える。フランスのCNILの主張が受け入れられるとしたら、特定の国が定めたルールに世界中の国々が従わねばならないことになる。

今回の法廷闘争でグーグル側を支持した表現の自由を推進する団体、Article 19の代表者は次のように述べた。

「今回の決定は、表現の自由を守るグループにとっての勝利だ。フランスや英国、ドイツの規制当局の判断が、アメリカやインドなどの国々の検索結果に影響を与えることがあってはならない」と、同団体のThomas Hughesは述べた。

編集=上田裕資

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