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ロロ・ピアーナのフィロソフィーは、ドキュメンタリー映画の巨匠の心をも動かした。世界最高純度の繊維が生まれるまでの壮大なストーリーがまもなく公開される。


失われつつある大切な命

「地球上で最も過酷だといわれる場所で撮影するには、はっきりとした動機付けが必要です。例えば、時速200kmの風が吹く厳寒の地に誰が降り立ちたいと思うでしょうか。一方では、そんな環境に対峙し独自の伝統をつくり上げた民族もいれば、そこをユートピアとして生命を育む動物も存在します。ところが、いま環境破壊、気候変動の影響で生態系に狂いが生じている。いったい、そこでどんな現象が起きているのか。それを人々に伝えたいという思いが、私の好奇心を掻き立てるのです。使命感なくして、荘重な自然と向き合うことなど到底できません」

こう話すのは、言わずと知れたネイチャードキュメンタリーの巨匠、リュック・ジャケである。ジャケは、『皇帝ペンギン』で、第78回米国アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞している。

ジャケの撮る映像は、環境破壊への警鐘でありながら美しい。しかし、ただ耽美的な自然の姿ではない。

「私が手がけるドキュメンタリー映画は、環境破壊の問題を人々に喚起させる小さな一歩に過ぎないかもしれません。私は、温暖化がもたらした衝撃的な変化を南極で目の当たりにしました。平均気温がたった1度、2度上がるだけでも、適応できなくなる生物もいることを知ってほしいのです」


山羊の群れと過酷な生息環境のコントラストを壮大なスケールで描く、リュック・ジャケ監督と撮影クルーの制作風景。撮影は1月と5月の2回に分けて行われた。

カシミヤは「繊維の宝石」

そのジャケはいま、再び、「地球上で最も過酷といわれる場所」にいる。年間の寒暖差90℃という内モンゴル自治区、アラシャンで新たな挑戦を始めている。アラシャンは、「繊維の宝石」と称されるカシミヤ繊維を産出するヒルカス山羊が生息する場所としてよく知られている。カシミヤのとても細い繊維は、軽やかで、肌触りにも優れた製品を生み出す。美しい光沢とその稀少性が繊維の宝石と呼ばれるゆえんだ。

近年、化学技術の進歩によって、地球に優しく、手頃な価格帯のカシミヤ製品をつくるブランドも増えている。消費者にとってはありがたい限りだ。しかし、近年、世界的なカシミヤの需要の拡大とともに、ヒルカス山羊を人為的に繁殖させ、成長速度を高める一部のサプライヤーの行為が横行している問題がある。

“ 例えば、山羊のエサとなる牧草に農薬を与えたら……。”“ 例えば、純度の低いカシミヤを美しく仕立てるためにリサイクル不能の化学薬品や染料を使用したら……。” 生態系や環境にどれほどの悪影響を与えるか、想像に難くないだろう。だが、いまジャケが手がけているドキュメンタリーは、どうやら、悲観的なストーリーではなさそうだ。

その大きな理由は、ヒルカス山羊を保護し、羊飼いの暮らしをサポートし、伝統文化の保全に取り組んでいるラグジュアリーブランド、ロロ・ピアーナのイニシアチブが状況を好転させているからだ。ロロ・ピアーナが掲げるエクセレンスとは、最高峰の素材を製品化することだけではない。

最高峰の素材をさらなる高みに昇華させるため、サステナビリティにコミットしている点にこそ真価がある。さらに言うと、持続可能な開発をただ謳っているだけでもない。生産から消費までのトレーサビリティーチェックを導入し、透明性を担保しながらユーザーとコミュニケートしているのだ。これはカシミヤ業界にとってはかなり先駆的である。極上のカシミヤは簡単には生まれない。


種の保全、自然環境の維持、生産ノウハウの研究に向けて着実に歩むロロ・ピアーナのブランド哲学に映画監督・リュック・ジャケが共鳴して実現した3章から成るドキュメンタリー映像。第1章は内モンゴル自治区・アラシャン砂漠の厳しい環境を生き抜くヒルカス山羊とそこで暮らす人々のストーリーが描かれる。第1章は2019年11月にロロ・ピアーナ公式サイトにて公開予定。

「繊維の宝石」が生まれるには相応の背景があり、「繊維の宝石」を超える輝きを放つ、同ブランドの象徴「ベビー・カシミヤ」が誕生するまでにはさらに壮大なストーリーがある。ロロ・ピアーナは、最高品質のカシミヤ製品とともにそれに至る文脈を伝えることでエクセレンスを表現している。このことは劇的な効果を生んだ。ヒルカス山羊の生息環境の改善に貢献しているからだ。

このロロ・ピアーナの自然、生物、そこに住む人々への敬意に共感したのが、ジャケというわけである。

「私は、ひとりのアーティストとして、自らのインスピレーションに従って題材を選びます。モンゴルの地に立ち、ロロ・ピアーナがエクセレンスを体現するブランドである真の意味に気付きました。彼らは何十年にもわたり、羊飼いとの交流を大切にしてきました。過酷極まる環境を生き抜くヒルカス山羊の生態を研究したうえで牧場を支援しています。最高級のカシミヤ製品が誕生するまでのストーリーがこれほどまでに重厚だったとは思いもしませんでした」

神秘に満ちたヒルカス山羊の繊維

アラシャンの気候は、非常に苛烈だ。夏は45℃を超える灼熱の太陽が照りつける。その後、マイナス45℃を超える厳冬が何カ月も続き、ようやく短い春が訪れる。激しい季節の移り変わりのなかで、砂埃や猛吹雪から身を守るために、ヒルカス山羊の毛は2層になっている。長くゴワゴワしたヘアーの内側には、アンダーフリースと呼ばれる産毛があるのだが、この産毛は非常に細く、保湿性に優れていて、ヒルカス山羊の体温を調節している。

このアンダーフリースが、いわゆる「繊維の宝石」である。この毛を採取できる期間は、4月から6月までに限られる。冬の間、自らの身を守っていたアンダーフリースが自然と抜け落ちる時期である。ヒルカス山羊のライフサイクルに最大限の配慮を施さなければ、生態系は一気に崩れていく。

ベビー・カシミヤの場合、アンダーフリースを梳く作業は非常に繊細だ。牧場では、子山羊の身体を傷つけないように気が遠くなるほどの時間と手間をかけ、産毛を梳く。それでも子山羊1頭からわずか30gの産毛しか取れない。ちなみに成獣のアンダーフリースは200gほどなので、採取量がどれだけ少ないかおわかりいただけるだろう。

さらにこの貴重な繊維を採取できるのは、生後6カ月の白い毛の子山羊のみ。子山羊のアンダーフリースは、成獣の繊維よりも15%も細く、ぬめりも強い。カシミヤの価値は、繊維の細度とぬめりによって決まる。人間の冬の装いを軽やかにし、輝かせてくれるのは、生まれたばかりの命なのだ。

「映画業界に入る前、私は、過酷な環境で生きる動物の研究をする生物学者でした。ロロ・ピアーナのチームとプランを進めていくなかで、ヒルカス山羊の生態に興味深い発見がたくさんありました。おそらくこの環境で生きられる動物はヒルカス山羊以外に考えられません。自らの身を守るためにアンダーフリースが備わったのです。なんと神秘的なことでしょうか」



ロロ・ピアーナは、羊飼いの生活水準、クラフツマンシップも高めている。このプロダクトに参加する人々はロロ・ピアーナのエクセレンスを十分理解し、極上の繊維を生産するために誇りをもって人生を捧げている。だからこそ、ロロ・ピアーナのカシミヤ繊維の品質はいまなお向上し続けている。

「特筆すべきは、羊飼いたちは自分たちが愛する子山羊から採取した貴重な繊維を、ユーザーにも大切にしてほしいという思いでプロダクトに参加しているということです。この発想は、先進国のビジネスパーソンに最も求められている資質です」

ロロ・ピアーナのデザイナー集団は、カシミヤ繊維の稀少性、羊飼いの思いを理解したうえで、ダイナミックなビジュアル表現に変えコレクションを制作している。緻密なデザインは細部にまで施され、極上のシルエットを実現させているが、おそらく、この過酷な地に何度も足を運んでいるのだろう。

このドキュメンタリー映像は、3年の歳月をかけ、ようやく3部作の第1章が完成に近づきつつあるという。深遠なる自然、神秘に満ちたヒルカス山羊、羊飼いの技術、世界最高級の繊維が生産されるまでのストーリーは、自然とともに暮らす私たちに多くの示唆を与えるだろう。ちなみにこの叙事詩は、人々の想像を遥かに超えるスケール感にあふれた映像で幕を開けるという。





リュック・ジャケ◎1967年生まれ、フランス出身。映画監督になる前は生物学者だった。93年に短編ドキュメンタリー『南極の手紙』を監督。その後、2005年公開の『皇帝ペンギン』でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。


ロロ・ピアーナの最高品質のカシミヤコレクション


プリンス・オブ・ウェールズ・チェック柄のカシミヤ・ファブリックを使用したキャッスル・ベイ・コート¥600,000、ムース加工を施したベビー・カシミヤのタートルネック¥198,000、シングルプリーツ・パンツ※参考商品。


(左)コンテンポラリーにアレンジされたラペル襟が際立つオーヴァル・コート¥804,000、シャンキル・カシミヤ/シルク・ヤーンを使ったスカイ・タートルネック¥190,000 、シティ・パンツ※参考商品、シグネチャーカラーのソールをもつトラベラー・ウォーク¥101,000。(右)カシミヤ・ダブルの柔らかさはそのままに撥水性を持たせるレインシステム®加工を施したベイリー・アノラック¥597,000、独自のエクスクルーシブ技法によりわずか160gという軽量化を実現したフェザーライトのベビーカシミヤ・タートルネック¥168,000、レジャー・パンツ※参考商品。

ロロ・ピアーナ
https://jp.loropiana.com/ja

Promoted by ロロ・ピアーナ / text by Hiroshi Shinohara / edit by Akio Takashiro

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