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「この音は、人間が生来持っている認知バイアスにいい意味で働いて、『きっとこの人はいい人に違いない』という刷り込みをし、つながるボタンを押したくさせます。つまり、人が本能的に持っている癖をちょっと刺激して、自ら『ずれた』相性を選ぶように促すのです」

この「ポリフォニー」で、「反対の意見をもった人も、時には耳を傾けるに足る発言をするのだ」という成功体験を重ねることで、やがては人々の中に進んで「違う人とつながりたくなる」気持ちが培養されるのでは、と笹原氏は仮定する。

むろん本来は、情報社会で分断や偏見が生まれやすいことを一人一人が認知し、自分の意思でファクトチェックに励み、情報リテラシーを磨くことが一番だが、そういう根性論、頭でっかちの理論ではなかなか状況は変わらない。よって、そこに科学で介入しよう、というわけだ。

エコーチェンバー現象や確証バイアスといった人間生来の傾向も手伝って、SNSが社会的な分離や情報の同質化を促す時代、しかも不確定な価値が増え、誰を、何を信用したらよいかわからない現代。その中で、事実に寄り添い、一貫した意見を発信し続けることで信頼を置かれるインフルエンサーの役割は拠り所として非常に重要だ、と笹原氏は指摘する。

「これからのインフルエンサーは、情報というよりは、人を惹きつけ得る『意見』を発信し続けることで、人々に仮想的コミュニティを形成させ、それを持続させ得る人。信念に裏付けられた言葉の力を持っていて、受け手にとって の反対意見でも聞かせてしまうような、コミュニティ ーを孤立させたままでなく『つなぐ』ようないわば『貫通力』のある人、そのことで、ソーシャルネットワー ク空間での多様性を促進できる存在になっていく人のことをいうのかもしれません」

SNS空間でいま、この瞬間も起きている「創発現象」。インフルエンサーは「個々の発信の合計から、それ『以上の何か』、予想もしないポジティブな事象を創発する」役割を担えるのか。その可能性を科学の力が後押ししようとしている。



(注1)出典:Bots increase exposure to negative and inflammatory content in online social systems,Massimo Stella, Emilio Ferrara, Manlio De Domenico,Proceedings of the National Academy of Sciences Dec 2018, 115 (49) 12435-12440; DOI:10.1073/pnas.1803470115

(注2)情報拡散に関わる結合メディアとテクノロジー・ネットワークに関するインディアナ大のジョイントプロジェクト「OSoMe(オウサム、笹原氏も共同研究者として名を連ねる)」が開発したツール上で、Tolence(寛容度):「中程度」、Influence(影響力):「強」、Unfriending: 「頻繁」の「シナリオ04」を選択したもの。https://osome.iuni.iu.edu/demos/echo/ より再録

(注3)この例では、#社長辞任理由にしびれた #tシャツ #アッコにおまかせ #奴bot #さげまん #剛力彩芽 #月旅行 #ゾゾダムちゃん #ダンダムちゃん #ジョジョの奇妙な冒険 など。https://osome.iuni.iu.edu/demos/echo/ より再録


ささはら・かずとし◎名古屋大学大学院情報学研究科複雑系科学専攻講師。複雑系の観点からコミュニケーションを研究。SNSのデータ分析やコンピュータ中に構成した人工社会のモデルを通じて人間行動を理解する計算社会科学が専門。多様性を促進するソーシャルネットワーキング原理の提案や、フェイクニュースはどのようにして生まれ拡散し、脅威となるのかの科学的解明にも取り組む。著書に『フェイクニュースを科学する』(化学同人刊)。

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