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「AIソーシャルボット」はインフルエンサーの宿敵となるか  

AIの力がマーケティング分野に拡大する可能性を引用しつつ、同時に笹原氏は、近未来のインフルエンサーそのものが「人」とは限らなくなっていくことを視野に入れるべき、とも指摘する。受信者側に情報の真贋を見抜くリテラシーがなければ、悪意によっても容易にインフルエンスされてしまうのだ。なにせ、相手は「AIの集合体」であるかもしれないのだから。

こんな数字がある。ツイッターのアクティブ・ユーザーは全世界に3億3000万人(2019年4月時点)だが、米国・南カリフォルニア大学の研究グループによる2017年の調査では、ツイッターユーザー全体のうち約4800万ユーザー、約14%が「ボット」と推定されている。

ソーシャルメディア誕生後の情報空間において、ボットが決して無視できない存在であることに間違いはない。



そして、SNS上でも跋扈(ばっこ)する「チャットボット」はすでに、機械の知的さを認定する「チューリング・テスト」をクリアするレベルにまで進歩した。14年に英国・レディング大学で開かれたチューリング・テストの大会で、「ウクライナ在住の13歳の少年」という設定のコンピュータプログラムが、自然な対話によって人間の審判の33%を欺き、「合格」したのだ。

ツイッター社によるボットアカウントの凍結など本格規制も始まってはいるものの、今後はより個性的にふるまい、「情報のハブ」となる人間のインフルエンサーに「有効に」働きかける高度なAIボットが出現することを、科学は想定している。こういったボットの存在は選挙妨害以外でも重要な意思決定の場面において影響し、人々を誤った行動へ導く要因となりうる。



2017年のスペイン・カタルーニャ独立に関するツイッターユーザーグループ(賛成=Group1、反対=Group2)の各インフルエンサー(大きな青い丸)に対し、複数のボットが情報拡散を仕掛けている(赤い線)様子(注1)

ワンクリック先は世界

実は笹原氏の専門である計算社会科学の分野には、「ソーシャルメディア空間では、各種の感情の中で『怒り』がもっとも拡散されやすい」という実験結果がある。例えば2016年、「保育園落ちた日本死ね」でバズが起きたのも、人々に発信者の怒りが伝播し、メッセージが「炎上」に乗って運ばれた。いわば「拡散にうってつけの感情」が渦の中心になったと考えられるのだ。

「もうひとつ言えるのは、発信者は愚痴のつもりでひとりごちたが、ソーシャルメディア空間に落とされた瞬間、そのひとり言が『全員の叫び』に昇華したということ。『ワンクリック先は世界』という、過度につながり合った社会を象徴する事例だったと言ってもいいかもしれません」

文=石井節子 写真=小田駿一

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