ビジネス

2019.09.30

「なんとなく、をなくしたい」。自分の全てをデータ化する、研究者兼起業家

ジーンクエスト代表取締役 高橋祥子

高橋祥子が起業したジーンクエストでは、唾液から取った遺伝子情報から、自分の病気リスクなどを知ることができる個人向けの大規模遺伝子解析サービスを展開している。

同様の遺伝子解析サービスは、欧米などで人気が高まっており、日本でも大手IT企業などが手がけている。ほとんどの企業が欧米の遺伝子情報をもとに解析サービスを展開するなか、ジーンクエストは、日本人や日本人を含むアジア人を対象とする科学論文を情報の根拠の中心に用い、日本人用にカスタマイズ。さらに、解析対象となる疾病や体質リスクに関する遺伝子情報を300項目以上提供し、遺伝子に関して発表された新たな情報の無償アップデートも行っている。

高橋にとってのキーワードは「可視化」。

多くの人が「糖尿病にならないように」「がんになったらどうしよう」などの漠然とした不安を抱えているが、ジーンクエストのサービスを利用すれば、自宅で解析キットに唾液を入れて送るだけで、自分がかかる可能性の高い疾患や体質の傾向などに関する遺伝子情報がわかり、一人ひとりにあった目に見える対策がとれるようになるのだ。

高橋は根っからの研究者気質で、自分自身の体から常にデータをとって分析しているという。高橋曰く、「遺伝子とはヒトの根本の情報」。ヒトの根本を可視化する仕事の醍醐味を聞いた。

──遺伝子の研究をするようになったきっかけを教えてください。

一番の動機は、生命に関わることを研究したいな、という思いでした。もともと、父や親戚が医者で、病気を治したり、人の命を救ったり、ということが身近な環境で育ったんです。成長するうちに、病気になってから治療をするのではなく、病気になる前に予防や対策をとれるようにしたいという気持ちが強くなり、研究者になりました。

大学院在学中に起業し、今も研究者としての活動も続けているのは、「市場があまり確立されていない遺伝子業界において、研究を推進し、その研究成果を社会に活かしたい」という思いがあるからです。サービスを通して得られる膨大なデータを取得・解析することで、生命科学分野の研究のスピードを上げたいと考えています。

つまり、研究成果を社会に還元しつつ、同時に研究を加速させていくことが、この事業でなら可能になるんです。また、起業した当時は、こうした仕組みをうまく確立させないと、ゲノムという人類にとって有用な情報を活用することが困難になる、という危機感も持っていました。
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文=吉田彩乃 イラストレーション=Willa Gebbie

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