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では、なぜインスタだったか。

それは、生活者の間に「情報が多過ぎる」という意識が高まったから、と吉川は説明する。受信者は、できれば「知ってよかった」と思える情報にだけ触れたいと思いながら、すごいスピードで「いらない情報」をスルーし、目に留まったものだけをピックする。そうすることで「要」「不要」の判断リテラシーが研磨される。そして同時に、よりスピーディに情報処理できるメディアが好まれるようになった、というのだ。

企業も「一瞬にしてわからせる」ことに必死、でなければ「スルーされてしまう」という市場状況が、インスタというビジュアル中心のプラットフォームにピタリとはまった。そして一般の人たちが、等比級数的に、指数関数的に、フォロワーを集められるようになったのだ、と。



受信者側の判断リテラシーについて、メディア環境研究所のある調査結果がある。生活に直接関わることは他のメディアでも確かめる、人に聞く、という具合に複数の情報源で検証しているというデータだ。おそらくそれは、「情報を得ても、そのかいがなかった」と言うネガティブ体験をしているから、と吉川は指摘する。だからこそ、確かめるクセがついて、一般の生活者のメディアリテラシーや情報に対する感度や選択眼が上がったのだと。

「広告の手法でいえば、時代意識としてはたとえばCMで15秒はもう『かったるい』、長い。なので企業も、同じ15秒にも画面をいくつも入れこんで情報の密度を高める、といった戦術を取っているケースもあります。相当工夫して『見たかい』がある、『知ったかい』があるという情報の作り方をしなければ、伝播しない時代なんです」

ネットの「闇」は深い、しかし、なればこそ

このように生活者は、個々の発信者を厳格に見て、彼らが推薦しているモノや人を心の底から、可愛いとか、かっこいいと思っているかどうかを、スマホの画面を通じて「メタ的に(俯瞰・客観的に)」感じる鑑識眼を備えるようになった。ネットは嘘ばかりだ、と言われたのはすでに過去で、今はマスコミ、ネットのどちらにも信用に足る情報とニセ情報が存在することに、生活者は気づいている、と吉川は語る。「生活者のメタ認知能力がそんなふうに上がっているから、たいがいの『嘘』はもう見抜かれる。だからネット上で、くだらない、本質を欠いた動画が人気になってもすぐに沈むのでしょう」。

ネットの闇は深い。SNSが『世界の汚い片隅』を吐き出すスペースになっていることも現実で、ネットにはマスメディアよりもより克明に社会が投影されているともいえる。「だからこそ、真摯な何か、誠実な発言、腹の底から発信される本気のコンテンツを、SNSの受信者たちは必要としているのではないでしょうか」。

文・構成=石井節子

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