いずれ「情熱大陸」で……。失敗しても折れないメンタルの鍛え方

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ビジネスで成功している人や活躍している人ほど、メンタルが非常に強いというイメージはありませんか? どんな困難が起きてもブレることのない人間離れしたメンタルを持っているからこそ、あの人は成功しているのだ、と誰もが想像するものでしょう。

しかし、少なくとも僕が知る限り、今の時代を活躍している人の多くはどちらかと言えばメンタルが弱いような気がします。一度は不安症を経験した人も少なくないですし、ふさぎ込むと浮上までに時間がかかる人だっています。その分、彼らはいかなる多様性にも寛容で、かつ共感力が高かったりします。つまり、心の弱さも持ちながら、変化の時代に活躍できる要素を多分に備えているのです。

彼らは繊細な分、メンタルが決して強くないことを自覚しています。なので、メンタルが崩れないためのハックを数多く備えているのです。もちろん、生まれながらにメンタルの強い人もいますが、たとえ鋼の心を持った人でも、変化の多い時代では決断力を発揮するのにも相当のカロリーを使います。では彼らは、どのようにして、不安やトラブルを乗り越えているのでしょうか。

例えば、名著「1分で話せ」や「0秒で動け」の著者でもある伊藤羊一さんは、失敗やトラブルを乗り越えるときのコツとして、「これ、いつか俺が日経新聞の『私の履歴書』を書くときのネタになるな」と考えるとおっしゃっていました。つまり、即座に状況を客観視して、苦境もいつか語られるもにになると、ポジティブに捉え直しているのです。

僕の友人の場合は、伊藤さんと同じことを「プロフェッショナル仕事の流儀」で想像すると言っていました。トラブルが起きると自然と頭の中に「ポーン」と音が流れ、白いテロップで「これが彼の変化点」と出てくる、といった具合です。そこに映し出されている自分を思い浮かべると、「これは案外美味しい出来事だ」と思えてくるのだそうです。

これについて、「私は情熱大陸派ですね」という女性もいます。仕事で落ち込んだ日の帰り道は、ものすごく独り言が増えるそうです。それも、暗い夜道を険しい顔で歩きながら、横には情熱大陸のデイレクターがいて、小型カメラをこちらに向けながら恐る恐る「今日のできは……」とインタビューしてくるのに対し、「全然ダメでしたね……」という風に、ひたすら失敗を分析しているちょっとカッコいい自分、という設定を作っているのだとか。

つまり、目の前で起きたトラブルとそれに関わっている自分を、「インタビュアー」や「視聴者・読者」の視点で捉え直すことで客観視し、「これはいつかネタになる」と思い直すことで、前向きに捉えているのです。

このように、起きている状況をメタ認知したり、ネタにする習慣を持つことで、落ち込み起き上がることにカロリーを使わなくて済みます。これを自然とやっているのが、お笑い芸人の皆さんでしょう。
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文=尾原和啓

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