食品廃棄の解決策に? クローガーが農産物の劣化防ぐ塗布剤導入

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国際連合によると、世界規模での食品廃棄物は毎年約2兆5000万ドル(約270兆円)に上っている。さらに驚きの事実として、廃棄される食品の量は世界中で飢餓にあえぐ人の空腹を満たしても余るほどだ。

地球の人口が100億人突破に向け急増する中、世界では資源の枯渇を防ぐための革新的な解決策が必要とされている。

米小売大手のクローガー(Kroger)は2017年、2025年までに飢えを減らし、食品廃棄を撲滅することを目標とした「ゼロハンガー・ゼロウエースト(飢餓ゼロ廃棄ゼロ)」運動を開始した。同社は先日、米アピール・サイエンシズ(Apeel Sciences)が開発した、農産物の賞味期間を延ばすことができる食用コーティング剤「アピール(Apeel)」を塗布したアボカドを使い、米国内の全1100店を網羅する最初の試験を開始した。

アピールは、クローガーとの提携により数百万点の農産物の埋め立て処分を防ぐだけでなく、水の節約や温室効果ガス排出量の抑制、農地の保全などの効果が見込めると主張している。

アピールによると、生産された食品の約40%が捨てられている。食料品店は、無駄な買い入れやリサイクルの機会、慈善活動への貢献による節税の可能性を見極めることで、廃棄物の量を減らすだけでなく業績を改善することもできる。

同社は、アピールを施したアボカドの全米での導入に加え、クローガーのシンシナティ市場で今秋パイロット実験を実施し、長持ちするライムとアスパラガスを新たに導入する予定だ。アピールを塗ることで、賞味期限が倍あるいは3倍にさえ延びるとされている。

アピールのアスパラガス

アスパラガスは、大部分の人があまり知識を持たない非常に興味深い野菜だ。サプライチェーン上流で航空便を使うため、アスパラガスはどの果物や野菜よりも二酸化炭素の排出量が高いとされている。アピールを塗布したアスパラガスは倍の期間持つため、供給業者は典型的な輸送方法である航空便から船便に切り替えることができる。そうなれば輸送費は約10分の1になるとともに、温室効果ガスの排出量は約8分の1になる。これは、走行する自動車の数を10万台減らすことと同等の効果だ。

クローガーは、既に梱包業者などを通して生産側での作業を全て終えているため、今後はアピールを施した新たな果物・野菜をより効率的に導入できる。これはアピールにとっても朗報だ。
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翻訳・編集=出田静

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