インフルエンサーという言葉が頻繁に用いられるようになったのは、やはりソーシャルメディアの成長とリンクしている。アドバイザリーボードの意見も反映し、本特集で扱うインフルエンサーは、ソーシャルメディアを舞台に発信している人を対象とすることとした。
17年、米国版Forbesが「TOP INFLUENCERS」リストを発表した際、その定義を「インターネットから名声を築き上げて成功したインフルエンサー」とした。つまり元々著名であったタレントやセレブリティは除外し、「ネット叩き上げ」のユーチューバーやインスタグラマー、ファッションブロガーなどを特集したのだ。
当時から2年経った19年現在、インターネットやSNSとテレビなどのトラディショナルメディアは互いにより近しい存在になった。これまでテレビや映画や雑誌で活躍してきたが、SNS上で新たな活路を見出したタレントも少なくない。SNSで人気に火がつき、トラディショナルメディアで活躍する人も出てきた。
もはや「トラディショナルメディアを中心に活躍する芸能人」と「インターネットを中心に活躍するインフルエンサー」の間に線を引くのは困難である。今回の特集ではソーシャルメディアで活躍の場を拡張しているという条件のもと、「芸能人、タレント」も対象とした。
ソーシャル発信という「生き方」の確立
その影響力を活用し、商品やサービスの訴求を図る「インフルエンサーマーケティング」の市場規模も拡大の一途にある。
デジタル産業の調査を行うデジタルインファクトが、インフルエンサーマーケティングの市場規模の推計・予測値を算出した(2019年3月発表)。これによると、18年は219億円、うち半数近くをユーチューブによる市場が占める。10年後の28年には、全体の市場規模は4倍以上の933億円まで成長すると予測する。
インフルエンサーマーケティングの成長は、収入を得られるという点で、ソーシャルメディアで発信するという「生き方」を確立させた。アドバイザリーボードを務めたフェイスブック ジャパンの中村淳一が示した「本物のインフルエンサーは、マーケターという職業に近い」という見方は、インフルエンサーマーケティングのひとつの本質を物語る。
テレビCMなどに起用されるタレントとインフルエンサーとの違いは大きく以下の2点が挙げられる。インフルエンサーが普段の継続的な発信により、SNS上で直接、フォロワーとの強固なチャネルを築いてきたという点。またSNSでの表現手法やそのトンマナ自体、自ら試行錯誤しながら確立させてきた点である。
そんなインフルエンサーが企業や商品、サービスを宣伝するプロモーション投稿を行うということは、自ら築いたチャネルを使い、自らがアイコンとなり、どのような文脈や手法で訴求するか、クリエイティブディレクター的役割も自身で担うことになる。日々の発信で自ら築いてきたフォロワーにいかに受け入れてもらえるように伝えるかが問われる。
電通とフェイスブック ジャパンがインフルエンサーを対象にした共同調査で、インフルエンサーたちが、プロモーション投稿を引き受ける際の基準が明らかになった。その商品やサービスが自分の投稿になじむかどうか、またコンセプトや品質について自分で自信を持って薦められるかどうか、強いこだわりを持って引き受けているインフルエンサーが多いことがわかる。