共に、生きる──社会的養護の窓から見る


ゆずりはの母体となるのは、東京で児童養護施設と自立援助ホームを運営する「社会福祉法人子供の家」だ。今でこそゆずりはは東京都から「ふらっとホーム事業」を受託し助成を受けているが、開所当時はどこからも資金援助がなく、しばらくは法人の持ち出しでの運営となっていた。ゆずりは所長の高橋亜美さん(以下、亜美さん)は振り返る。

「どこに掛け合っても、『あなたたちが必要だと言っていることは、もうぜんぶ既存のサービスとして存在している。みんなそれぞれを活用すればいいだけで、どうして新たに“アフターケア”というサービスが必要なんですか』と言われたよね」

仕事を失ったらハローワーク、生活困窮は生活保護、障害があれば障害者年金や障害者手帳、貸付は社会福祉協議会、債務整理なら法テラス、DV被害は婦人相談、ひとり親なら子育て支援課……。これらの相談窓口で、困った人は自分で必要な手続きをすればいい、というのだ。

しかし多くは、ヘルプが出された時点でいくつもの問題がからみあっている。本人も疲弊し、何をどうしたらいいかわからず動けなくなっているため、自分の力だけで問題を解決していくのは難しい。

また、ゆずりはに相談をしてくる人は、たいていが「はじめまして」の人だ。他に相談に行ったが取り合ってもらえなかったり、聞いてもらえない経験をし、行政不信や諦めの念を抱きつつ、ここにたどり着くことが多い。

「私たちが全部解決できるわけじゃないけど、どこかにつないで終わりじゃなくて、一緒に問題解決していく、伴走型支援が必要なんです。ゆずりはでは、『ここで話してよかった』と思えるやりとりを大事にしたい」と亜美さんは言う。

羽を休める場所のないことが生み出す困難


アフターケア相談所「ゆずりは」での就労支援、ジャム工房の一コマ

親や家族を頼れない人たちにとって、仕事を失うことは文字通り死活問題だ。

「精神的、体力的に働ける状況でなくなったとき、彼らには“ちょっと休める”家庭がない。貯金がたくさんあれば別だけど、多くの子はギリギリで生活を維持しているので、『働けなくなる=生活破綻』に直結してしまうんです」

そうすると、女の子なら性産業に頼らねばならない状況も出てくるし、男の子ならブラックバイトに絡め取られる。報酬は即金、しかも現金でもらえて、場合によっては寮を備えている。保証人も審査もいらずに入居できる住まいや、その日のうちに手に入るお金が、彼ら彼女らが一日一日を生きるのを支えている現実がある。

「風俗やってる子も、言葉では、『別に風俗やってること、なんとも思わない』とか言うんだけど、その背景には、その子がその職業を選ばざるを得なかった、強いられてきた何かがあるんです」

もう風俗は続けられない。でも中卒だし、他にできる仕事もない……そんな声を、亜美さんは幾度も聞いてきた。彼らはいつしか、生活のため、通院のため、友だちから借りたお金を返すためと、いろいろな理由で借金を重ね、大変な状況に陥ってゆずりはにつながる。

債務整理の相談を入り口に、実は家賃や光熱費の滞納で家を追い出されそうとか、メンタルの病気や障害で働けないことが明るみになるなど、次々に事実が出てきて解決に時間がかかることもしばしばである。

文=矢嶋桃子

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