米国の一部で「極めて重い」EV税導入へ 普及の大きな障壁に

ニューヨーク・インターナショナル・オートショー2019に登場したRivian R1Tピックアップトラック(Miro Vrlik Photography / Shutterstock.com)

米消費者情報誌コンシューマー・リポート(CR)は最近の記事で、米国の一部の州では電気自動車(EV)所有者が毎年支払う登録料が、内燃エンジン車所有者がガソリン税として支払う額の最大4倍に増加する可能性があると伝えた。

値上げの狙いは、州の燃料税の支払いが不要なEVの普及により失われる収入を補完することにある。自動車の燃費が向上を続ける一方で、ガソリン税の引き上げは政治的に不人気であるため、多くの州が苦しい財政状況に陥っている。

ガソリン税は道路整備の資金源として使われている。ただCR誌によれば、主要な財源ではないという。州の高速道路関連予算に使われたガソリン税の割合は、データが公開されている直近の年である2016年には29%未満だった。残りは登録料や高速道路料金、その他の税収でまかなわれていた。

CR誌は、今年に入ってから導入または増額されたEV関連料金8種のうち、7つが2025年までに「極めて重い」水準にまで膨れ上がるとしている。それにより、EV所有者には従来型自動車の所有者よりもはるかに多くの料金がかかる上、EVの普及が阻害される可能性があると、CR誌は警鐘を鳴らす。

イリノイ州の議会は今年、全てのEVに対して年間1000ドル(約10万8000円)の登録料を課すことを提案した。これまでの登録料は標準の登録料に追加して17.5ドル(約1900円)だったため、60倍近くに増加する計算だ。この提案に対しては当然のことながら、EVの売り上げに大きく影響するとの激しい反発が生まれた。反対派の中には、同州ノーマルの旧三菱自動車工場でEV生産を間もなく開始予定のスタートアップ、リビアン(Rivian)も含まれていた。

最終的に議員らは頭を冷やし、同州でのいわゆる「EV税」は100ドル(約1万800円)という比較的まっとうな額に落ち着いた。これは全ての自動車を対象とする年間登録料に上乗せされるもので、この料金も158ドル(約1万7000円)に増額されている。

米国で現在、EV所有者に追加で年間料金が課せられている州の数は26だ。さらに8州ではEV税が提案されている。皮肉なことに、こうした州には自動車の排ガス削減のためEV購入に多額の補助金を出しているカリフォルニア州やコロラド州などが含まれている。また興味深いことに、EV販売台数が非常に少ない州もいくつか含まれている。
次ページ > EV税、超高燃費の車と同等に

編集=遠藤宗生

ForbesBrandVoice

人気記事