ビジネス

2019.09.27

諦めなくていい社会を作る──「スタートアップスタジオ」構想が変える日本の起業文化

(左から)サン アスタリスクCEOの小林泰平、リーン スタートアップ・ユニット マネージャーの船木大郎

「スタートアップスタジオ」という言葉は、まだ私たちには馴染みがない。アイデアと野心のある若き起業家を金銭的・技術的にサポートする仕組みのことだが、まだ定義が曖昧な概念だ。この「スタートアップスタジオ」によって、スタートアップ支援に新たな可能性を見出そうとする男がいる。数々の企業支援を実現してきたサン アスタリスク(Sun*)の小林泰平だ。

元バンドマンで、元ホームレス。数奇な人生を経てきた小林は早稲田実業高校を中退後にクラブ勤務を経てITエンジニアとなり、その後2012年にベトナムで、サン アスタリスクの前進となるFramgiaを立ち上げた。17年12月に同社CEOに就任した小林は、これまで250社、300を超えるプロダクトの開発実績を作り、数々の企業の成長支援行ってきた。現在サン アスタリスクには、エンジニアを中心に1500人以上のクリエイターが在籍。彼らの技術を活用し、数多くのシステム設計からデザイン・インフラ構築、プロダクト開発などを手がけている。

小林が、7年間の企業支援を通して気がついたのは「新規事業とスタートアップは全く異なる」こと。

「最初は“新しいことに挑戦する”という点で一緒だと思っていましたが、スタートアップは存在しない市場を自ら作り上げることが多い。最初は誰も投資をしてくれないし、イノベーションを起こすためにも少数精鋭で既存のルールに立ち向かうような人たちが多いんです。一方、大企業の新規事業では、すでに会社にあるアセットを活用して既存ユーザーに新しい世界を提案・誘導するのが主。目的も流れも全く異なります」

さらに新規事業でも、ゴールや規模によってその攻略法は異なる。しかし、シリアルアントレプレナー(連続起業家)でない限り、ほとんどの起業家にとってはじめてのことばかり。何をすればいいか、当然わかるはずもない。小林は初めての資金調達でファイナンスが想定とは違う形になり、立ち行かなくなって「疲れてしまう」起業家を何人も見てきたという。

すべての熱意ある起業家が成功してほしい

そんな状況に対して、小林が考えたのが「事業・目的ごとに存在するベストプラクティス」を提案することだった。これが小林の提唱する「スタートアップスタジオ」だ。

これまで数々の起業・事業を見てきた小林だからこそ、そのノウハウを活用することで「少しでも世の中を幸せにする」ことに挑める。

「あの時こうすれば上手くいったんじゃないか、と思うこともあったんです。事業撤退した後に『上手くいきませんでしたが、本当にありがとうございました』と言われた時は本当に寂しくて。できれば、全員が成功してほしいと思ったんです。失敗しても、もう一度チャレンジできる環境があったらいいし、僕らができるならば全力でサポートしたい」
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文・写真=角田貴広

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