再配達がない世の中への取り組み 家の「電力データ」活用も

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日本はEC化率が各国と比べても相対的に低く、これからまだまだ伸びしろがあるとされている。一方で、増加するネットショッピングに対応すべく、再配達を削減するための物流の効率化が大きな課題となっている。

働き手不足にさらに負担を強いる、いわゆる「ラストワンマイル問題」のひとつだが、昨今では人工知能(AI)の能力をその課題解決に使おうという動きが目立ち始めている。

代表的なのは、東京大学発のベンチャー・日本データサイエンス研究所とNextDriveの取り組みだ。同研究所では、各家庭のスマートメーターから収集した電力データを活用。受取人が在宅中か、不在にしているか“未来予測”を行う。実証実験段階では人工知能を使って予測ルートを割り出した結果、配達の成功率が98%にのぼったという。両社は今後、地方自治体や宅配事業者と協力し商用化を進めるとしている。

誤配送やなりすまし受取りを防止する新しいタイプの「IoT宅配ボックス」という切り口から、再配達問題を解決しようというベンチャー企業もある。ファーウェイ出身の沈嬅氏が日本で起業したPacPortだ。

同社が開発を進めているスマート宅配ボックス「PacPort」(社名と同名)は、配達者が発送の際に発行されたバーコードを読み込ませると開錠。逆にバーコードが認証されないと開錠することはなく、受取人が不在でも誤配送なく荷物を置くことができるようになっている。また、複数の宅配業者が荷物を届けた際にも置けるようになっており、「持ち去り」などトラブルを防止するために宅配ボックス内に防犯カメラが設置されている。

受取り側は、スマートボックスと連動したスマートフォンアプリで配達状況を確認できる。アプリとメールの情報を紐づけると、複数の注文・配送情報を宅配業者別に一覧で管理してくれる仕組みだ。メール内のテキストやPacPortへの投函・受取り情報などの解析・整理には、人工知能が採用されている。

沈氏は、これらの要件を持ち合わせたスマート宅配ボックスは、ありそうでなかったと話す。受取人の宅配待ちの時間ロスが解消されるという意味でも、今後の普及に期待が高まる。

「日本では年間42.5億個の荷物が配送されているが、そのうち16%にあたる7億個の荷物が再配達となっている。PacPortで日本の物流業界が抱える深刻な人手不足問題の緩和に貢献していきたい」(沈嬅氏)

ラストワンマイルの課題を解決するテクノロジーとしては、人工知能によって制御されたドローンや宅配ロボットの開発も進む。しかし、航空法や道路交通法など法律との兼ね合いでいましばらく時間がかかりそうだ。すでにあるインフラやリソースを、AIで上手く効率化していくことこそ先決、また解決の近道となるかもしれない。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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