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魁であれ。変革の時代を生き抜くルール


「顧客から期待される事だけに集中する」という考え



伊藤:この春にはイタリア・ミラノでの展示会(「MADE EXPO 2019」。2019年3月13日~16日)にも出展されましたね。手ごたえはいかがでしたか。

神谷:ありがたいことに、大盛況といってよい結果でした。最初こそ現地の建築家に「日本のメーカーがイタリアでドアを売るなんて、『北極で氷を売る』ようなものだ」という事を言われましたが……。イタリアのインテリアはそれこそ「売切御免」で、売れればOK。デザイナーやバイヤーだけを意識したプロダクトが少なくなく、使う人のことを考えたものづくりという視点ではなかったんです。そういった意味で、フルハイトドアという商品を初めて見た方からは大変よい反応もたくさん得られましたよ。

伊藤:徹底的にエンドユーザーである施主の視点に立って商品をつくってきたからこその自信ですよね。

神谷:そうですね。基本的に住宅業界はリピーターのつくような業界ではありませんし、業界でもそこを意識していない方が多い。ですがフルハイトドアは交換性が高く、付け替えも容易にできます。どんどんアップデートしていける商品なんですよ。既に住まれている施主向けには「夜会」という発表会を開催して、新商品を直接ご覧いただける機会を設けています。家を建てたあとも、施主と生涯にわたってお付き合いしていくことができるブランドになりました。

伊藤:「JDI Future Trip Project」で一緒に開発した「フルハイトドア ミラオス」も、新商品として取り扱いがスタートするそうですね。

神谷:はい。実現したかった「IoTドア」で、ドアというモノが持っている可能性をまた広げてくれましたね。

伊藤:前職では新規開拓のトップ営業マンでもあり、現職では業界の掟に縛られることなく様々なことにチャレンジしてこられた神谷さんですが、そのキャリアの中で大切にしていることは何ですか?

神谷:「やらないことから先に考える」重要さでしょうか。デフレ環境下では、ビジネスは足し算ではなく、引き算で考えるものであると思っています。つまり、やらなくていいことまでやっているから、効率や生産性が下がるんです。その結果日本の生産性は世界第28位まで低迷してしまった。

例えば日本のメーカーは、毎月、月次の損益計算書(PL)を1日でも早く出すことに汲汲としていますよね。余多ある経営や生産性改善の勉強会でもテンプレートですよね。でもPLなんて結果にすぎません。月末で締めて一日や二日で出したところで結果が変わるわけではありません。

それよりも見るのは受注結果、そしてその元になる見積依頼。これを管理者以上の者が全員毎日リアルタイムで情報共有する仕組みを作る方が、遥かに重要です。そのうえでビジネスモデルが明確であればPLなんて1カ月前からほぼ誤差なく予想できます。ですから我が社では、経理に月末の役員会までに作ればいいよと言っています。

伊藤:健全に経営をしていれば必要ないはずの作業が発生している場面、ありそうですね。

神谷:経営面では、人を分散させないことに注力しています。フルハイトドアというブランドが定着してきたので、時々「次はどんなことをするんですか」と尋ねられることもありますが、「やりません」とだけ答えています。私どものモットーは、「期待されていない事はやらない」「顧客から期待される事だけに集中する」。

そのためにも経営資源であるヒト・モノ・カネの中で、一番分散させてはいけないのはヒトなんですよ。モノとカネはもし失っても補填できますが、ヒトだけは替えがきかない。私は最終的に、うちの会社の人間が幸せに仕事をしてくれるのが一番で、それを守るのが自分の責任だと思っています。

連載:魁であれ。変革の時代を生き抜くルール
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文=伊藤嘉明

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