ネットを介した職探し 不平等促進の要因に

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ブラックホールの中へ

本質的に人間味に欠けるこうした求人を、一部の応募者は“ブラックホール”に例えている。こうした求人に対して応募書類を送信しても、返事が来る可能性は非常に低い。理由は競争の激しさと、大量の応募者が殺到したことにより人事チームの業務量が膨大となることにある。

しかし、影響力が大きい上級職の状況は全く異なる。こうした職務には非常に具体的で細かいスキルが必要となることが多く、それを備えた候補者ははるかに少ない。そのため求人側は、そうした候補者を“紫色のリス”に例えている。

研究チームは「こうした職務は大きな求人情報サイトに掲載されることが多いが、そこで実際に応募してくる候補者に対して偏見がある」と述べている。「人事担当者らはその代わり、リンクトインなどのサイトを使い、現在職があって積極的に求職活動をしていない『紫色のリス』を見つけて引き抜こうとする」

上級職での非公式な採用方法への依存は大きな障害となる。既に上級職に就いている人が他の上級職へと引き抜かれる可能性が高くなり、考慮される潜在的な候補者の数が非常に少なくなってしまうからだ。

選考対象者の少なさ

英慈善団体サットン・トラスト(Sutton Trust)と社会的流動性委員会(Social Mobility Commission)は先日、社会に存在するさまざまな上級職に就く約5000人の学歴を分析した。その結果、非常に不平等な状況が明らかになった。

分析結果をまとめた報告書によると、強い影響力を持つこれらの人たちは、平均的な人と比べて私立校出身の割合が5倍高かった。報告書は「ごく少数の人たちが権力を握っている。それは(英国で)私立校に通う7%と、オックスフォード大学・ケンブリッジ大学を卒業する1%だ」と指摘している。

またマッキンゼー・アンド・カンパニーが先日発表した調査結果では、こうした問題が先進国での憂慮すべき格差拡大の背景となっていることが浮き彫りとなった。マッキンゼーの分析では、ある人が得られる機会が、その人の個人的な状況、特に家族の経歴や居住地によって決まる傾向が増していることが分かった。

この問題は重要だ。米国産業・組織心理学会(SIOP)の報告書では、性別や人種、国籍だけでなく社会階級の面でも多様な労働力を持つことにより、協働の改善や意見の多様化、よりバランスが取れた経営チームなどのメリットが存在することが示されている。しかしこうしたメリットにもかかわらず、現代の組織のほとんどが労働者階級出身者を積極的に不利にする採用慣習を持っていると報告書は指摘している。
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編集=遠藤宗生

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