35年前から進化しない日本の教育は、世界の変化に追いつけるのか

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世界は大きく変わろうとしている。90年代のインターネット革命に始まり、昨今のAI、ディープラーニングなどのテクノロジーは驚くべき速度で進化している。「シンギュラリティ(技術的特異点)は、人間の生活のあらゆる習慣や側面をガラリと変化させてしまう」と人工知能の世界的権威であるGoogle社のレイ・カーツワイルはその著書で述べているし、経済界ではすでに、われ先にと最先端の技術を取り入れる努力をしている。それはすでに多くの読者も知るところであろう。

一方、日本の教育現場はどうだろうか。均一にならされたテキストを使い、手書きで繰り返し学習を行うような旧時代的なスタイルの教育を受けている子どもたちが未だ大半を占めている。そのような子どもたちは、果たしてこの先、誰も経験したことのない未知の課題が続出する時代を生き抜くことができるのだろうか。

今必要なのは、新しいテクノロジーを「メリット」にするための教育
 
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が、「今後10〜20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクにさらされている」と論文「雇用の未来」で発表したのが2013年。あれから6年が経った今、技術革新はさらに加速度を増した。

しかし、仕事の自動化は必ずしも人間にとって「リスク」ではない。新しい技術を有効利用し、今まで存在しなかった新しい仕事が次々に創出されるという条件が整えば、AIをはじめとする新しいテクノロジーは、人間にとっての「リスク」ではなく「メリット」にもなる。私たちが直面する「少子高齢化」「持続的人口現象社会化」「環境問題」などをはじめ、これまでの知識だけでは対応しきれない問題に前向きに対応し、より豊かな生活に転換する可能性を持ち合わせている。未曾有の課題解決や、新たな仕事の創出につなげるには、私たちにも次のような態度が必要となる。

斬新な発想を既成概念にとらわれることなく吟味し、柔軟に受け入れる。そしてまた、その発想を実現させるために、意見やニーズの異なる人とも対話し、お互いの理解を深め、多様な価値観を認め合い、合意を取り付けることも欠かせない。さらに、合意したことは必ず実践するという精神をもち、たとえ失敗したとしても、結果が出るまで考え、挑み続ける粘り強さをもつ。

そのような態度をもってこれからの社会を担うのは誰か。いうまでもなく今の子どもたちである。子どもたちへの教育の内容と質は、20年、30年後の未来に直結している。

日本は高度経済成長期以降、時代の変化のスピードが加速した。工業化が進み、新しい技術や電子機器が次々と登場し、その度に生活や文化や価値観、そして社会の仕組みは大きく変化してきた。この時代をになった世代は、その技術等に適応する努力を強いられた。当時の教育はこうした生産現場に人材を有効に振り分けることを目的としたものだった。学校をリクルートシステムに組み込むことで、人材配分を合理化したのである。その結果、多くの大人たちは、次世代にも自分たちと同じ方法で勉強することを求める傾向が生まれ、なかなかそこから自由になれない時代が続いてきた。目上の人に言われたことを厳守して遂行し、「正解」とされていることにいかに効率よくたどり着くかの競争のために努力をすることこそが美徳だと。
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文=太田美由紀

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