いま、求められている新しい教育 現場で起きている「革命」を追う

Andrea Chu / Getty Images

いま、社会には「生きづらさ」が蔓延している。技術の革新の陰で、一億総中流と言われていた日本に格差が広がり、子どもの7人に1人が相対的貧困となった。「落ちこぼれ」は自己責任だと言われるようになった。マイノリティが生きづらく、差別が蔓延する世の中になってしまった。

子どもたちをも「生きづらさ」が取り巻いている。不登校、引きこもり、いじめ、無気力、虐待、貧困、発達障害......子どもたちを巻き込むさまざまな事件も紐解いていくと教育と切り離すことはできない。

どれも当事者だけの問題ではない。このような社会をつくってきた「これまでの教育」とは何だったのか。子どもの貧困は子どもの責任ではない。大人の貧困である。社会の貧困である。それぞれ異なる問題のように語られることも、その背後には共通する問題がある。

社会問題はすべての人にとって「他人ごとではない」ことを改めて捉え直すべきときが来ている。これからの未来を支える子どもたちの教育環境を提供する大人こそが、学び直しの時代に差し掛かっていることに気づかなければならない。

社会を取り巻く「生きづらさ」の正体

私は、これまで15年以上にわたり、編集・ライターとして乳幼児の子育てや教育をテーマに雑誌や書籍、web、テレビ番組などさまざまなメディアの制作に携わってきた。多くの教育現場に足を運び、子育て中の保護者たちのリアルな声、保育士や教員の声を数多く聞く機会を得た。妊娠期からの切れ目のない支援として注目されているネウボラや、母子の健康をサポートする日本各地の保健師の取材も行なっている。

現在は、東京都下のある自治体の「子ども・子育て会議」に市民委員として参加し、教育委員会では家庭教育支援のためのワークシートを幼児から中学生の保護者に向けて作成している。2017年には保育士の資格を取得。いまも月に数回は子育て相談の現場で多くの保護者の悩みに耳を傾けている。

それぞれの現場で感じるのは、旧来の日本の学校教育を受けて大人になった親や教員たちこそが、偏差値や学歴という古い価値観から逃れられず、一方で「先の見えない未来に対してどのように子育てや教育をすればいいのかがわからない」という不安に悩まされているということである。

20世紀型の教育ではいけないと薄々は気づいている。そして焦ってはいるものの、次に進むべき道がわからない。「何もしないと大切なお子さまが周囲から遅れを取ってしまいますよ」と進学塾に脅されながら、霧の中で子育ての正解や幸せへの近道を探している。
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文=太田美由紀

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