スイスの湖畔で「ケタ違い」なワインの祭典 次回は20年後?

「フェット・デ・ヴィニュロン」と呼ばれるワイン生産者の祭典

スイスのレマン湖の湖畔に、ヴヴェイという小さな街がある。あのネスレの本社があり、喜劇王チャップリンが晩年を過ごした街だ。

そのヴヴェイの近くにはモントルーという街もあり、ここはフレディ・マーキュリーが愛した街として知られる。クイーンのレコーディングが数多く行われたMountain Studioここにあり、彼の死後にリリースされたアルバム「メイド・イン・ヘヴン」のジャケットには、モントルーに建つフレディの銅像とレマン湖が写っている。

そして、このあたりは「スイスのリヴィエラ」と呼ばれ、レマン湖畔の高級リゾート地として世界中の著名人たちから愛される場所だ。



そんなスイスのリヴィエラの中心地、ヴヴェイの街で今夏、「100年に4回」という、だいぶアバウトな頻度で開催されるワインの祭典が行われた。

スイスのワイン消費量は世界第5位

「フェット・デ・ヴィニュロン」と呼ばれる祭典、フランス語で「ワイン生産者の祭り」という意味である。20年ぶりの開催となった今回、7月18日から8月11日までの会期中に、ヴヴェイを訪れると見込まれた人数はおよそ100万人。その規模はリオのカーニバルに匹敵するほどだ。

ここまで聞いただけでも、「なぜスイスでそんな大規模なワインの祭りが?」とか、「なんでそんな開催頻度で?」とか、いろいろ疑問が湧いてくると思うので、まずは簡単にスイスのワイン事情から説明したい。


仮装したワインメーカーの人々

実は、スイスは、国民1人あたりのワイン消費量が世界で第5位に入るほどのワイン大国だ。国全体のワインの生産量は、フランスのブルゴーニュ地方と同じくらいだが、そのうちの98%がスイス国内で消費されている。

さらに、その3倍の量を外国から輸入して飲んでいると聞けば、いかにスイス人がワイン好きかをおわかりいただけるだろう。

スイス国内で生産されたワインは全体の2%ほどしか国外に輸出されていないので、日本のワインショップやレストランで目にする機会はかなり少ない。それが「スイス=ワイン」というイメージに結びつきづらい要因にもなっている。

そんなスイスのなかでも、レマン湖畔はワインの一大産地となっており、とくにヴヴェイは1000年以上も前からワイン造りは盛んだ。その歴史的背景や、ブドウ畑とレマン湖の絶景が織りなす美しい景観から、この一帯は「ラヴォーの葡萄畑」として、2007年に世界遺産に登録されている。

ラヴォーとはレマン湖北岸の丘陵地帯を指すが、フェット・デ・ヴィニュロンは、この地域のワイン生産者組合が中心となって催される祭りなのだ。

世界各地で「ワイン祭り」と名のつくものは数あれど、それらのほとんどは、ワイン好きが集まって美味しいワインをたらふくいただく、というのがメインになりがちだ。去年、僕がお邪魔したボルドーのワイン祭りも、もちろんこの地方のワイン文化を十分に学び、感じることのできるイベントだったが、訪れる人々の目的はあくまで「ワインを飲むこと」だった。

しかし、このフェット・デ・ヴィニュロンは、より文化的側面の強いワイン祭りとなっているのだ。
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文=鍵和田 昇

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