アリーナを一度通り過ぎてレマン湖畔まで足を伸ばせば、そこにはさまざまな屋台が軒を連ね、湖の上には特設のレストランなども設置されている。レマン湖畔の絶景とスイスワインを楽しみながら、みなスペクタクルの開演を待っているのだ。
レマン湖畔の屋台
ワインのテイスティングもほどほどに、会場となるアリーナに入る。すると、まずはその大きさに驚かされる。これが本当に1カ月弱のイベントのためだけにつくられたものなのだろうか。
聞いてみると、今回は会場内に5つものステージを組んでいるそうだ。そりゃもう、迫力がすごい。2万人の観衆で埋まった会場のどこからかウェーブが始まり、それに乗って開演を待つ。あたりはすっかり夕暮れ時だ。
スペクタクルが始まったのは、夜の9時。そこからはまさに「めくるめく一大スペクタクル」が繰り広げられた。
アリーナの床一面に仕込まれたLEDフロア(世界最大らしい)や可動式のセットが、次々と登場する5500人の演者の動きとリンクして、ステージは進んでいく。演者たちは、それぞれのチームごとに与えられた配役を忠実にこなしている。けっして「一糸乱れぬ」というわけではないが、その動きからは温かみが感じられ、この祭りに対する彼らの思いが十分に伝わって来た。
例えは悪いかもしれないが、大人が時間やお金をかけて全力で学芸会をやったら、このようになるのではないかという気がした。つい応援したくなるし、とても心地よさを感じるステージだ。
随所にスイスやヴヴェイの文化が散りばめられ、終盤では本物の馬車や牛、牛飼いたちが登場し、アリーナを周回していく。クライマックスとなるのは、生産者の表彰だ。ステージに上がって称えられるワインメーカーたちは皆誇らしそうで、そして穏やかな表情が印象的だった。
全てが終わったのは、23時前。すっかり肌寒くなっていたが、非常に満足度の高いイベントであった。次の開催年はまだ未定とのこと。果たしてそれは、20年後か25年後か。その頃には、舞台技術も地球の気候もワインの味も、今と同じではないだろう。
次はどんな時代に、どんなスペクタクルを見せてくれるのか。最初で最後のつもりで来たが、どうやらそうはいかないようである。
連載:世界漫遊の放送作家が教える「旅番組の舞台裏」
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