ここでもまた、驚きの事実を耳にしたのだが、ほとんどのスタッフや出演者はボランティアで参加しているというのだ。また、ワイン生産者の祭りということで、ヴヴェイのワイン生産者組合に所属するワインメーカー300人も出演者として参加している。
実際、フェット・デ・ヴィニュロンの期間中に、ラヴォーの葡萄畑にあるワイナリーにお邪魔させてもらったのだが、彼らは午前中にワイナリーでの業務をして、午後からは祭りの準備に取り掛かる。スペクタクルは会期中は毎日行われるので、よくこんなこと続けるなぁ、というのが正直な感想だ。
世界遺産に登録されているラヴォーの段々畑
これが、例えば、本番1週間前から準備すれば事足るようなものならいいが、なんと今回のスペクタクルに向けて準備を始めたのは、1年前だという。出演者の衣装もかなり立派なものだが、これも前回の使い回しではなく(まあ20年前のものはそのまま使えないだろうなという事情もあるだろうが)、今回のためだけに用意されたのだそうだ。それだけ、参加者がこの祭りにかける想いが強いのだろう。
なんとも非効率極まりないこのイベント、いったいどのくらいの予算がかかるのか気になるところだが、今回の総予算は1億スイスフラン(約108億円)を見積もっているそうだ。この予算を賄うには、祭りの収益だけではとても追いつかないので、ネスレやスイス航空といった大企業からのスポンサー協力も手厚い。結局、今年は赤字になるようだが……。
こんな調子なので、フェット・デ・ヴィニュロンを頻繁に開催するのは、確かに難しそうである。ちなみに、前回開催の1999年は、7年かけてイベントの準備をしたそうだ。
次の開催は20年後か25年後か
次回の開催までは最低でも20年以上ある。その時まで自分が元気でいられるかわからないので、8月初旬、僕も一生に一度の覚悟でヴヴェイの街を訪れた。
ヴヴェイの駅を降りれば、駅前から早速祭りが始まっている。訪れた客を出迎える大きなゲートをくぐると、もうすぐそこにはメイン会場となるアリーナが見えてくる。
アリーナまでの道に沿っては人だかりができているが、仮装した人たちも多く見かける。どうやら彼らがスペクタクルの出演者のようだ。開演まで1時間ほどしかないのに、みな楽しそうにワインを飲んだり、観光客との記念撮影に応じたりしている。