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2018年公開の映画『犬ケ島』のニューヨークプレミア上映会でのカット。友人の1人、俳優のノーマン・リーダスと一緒に。

「ウェスにとって、僕は日本でたまたま知り合った友達。なのに、よくここまで信頼してくれるなと思って。信頼に対しては、やっぱりきちんと返さなくてはいけない。だから、『第68回ベルリン国際映画祭』で銀熊賞(監督賞)を獲得したときは、嬉しさより、肩の荷が下りたという感覚のほうが100倍強かったです」

「友達」と「信頼」。

インタビュー中、野村の口からこの言葉を何度も聞いた。金より何より、世の中は人間関係で成り立っている。一番大事なのはそこだと知っている。

だから友達も、消費者も、自分自身も絶対に売らない。信頼を守り抜くためにベストを尽くす。

『犬ケ島』の成功を機に、野村の元には「映画の脚本を一緒に書かないか」といったオファーが舞い込んでいるという。だが、野村は「ほぼすべて断っている」と言う。

「映画は大好きだけど、映画だけやっていたら俺の人生終わっちまうわと(笑)。もったいないって言われるんですけどね。こんなに名前が出るならチャンスだよ、とか。でも、ステップアップのためにやったわけではないので」

「絵に描いた餅」では、世の中は動かない

話をインフルエンサーに戻そう。

有名人の知名度や情報拡散力を借りて、自社商品を売りたいと目論む企業は多い。

野村のところにも時々、企業から相談が持ち込まれる。しかし、うまくいっていない企業を見ていて、野村はあることに気づいたという。

それは、「最もタチが悪いのは、『自分は世の中の潮流を理解している』と思い込んでいる40代の人たちだ」ということ。野村は言う。

「SNSにしても、『知ってますよ。アカウント開いてますし』と言うんです。でもSNSの本質って、実際に使いこなしている人じゃないとわからないじゃないですか。そのうえ、彼らは現場に出ようとしない。だからこう伝えます。『それで外部の人間を雇って、売れるようにしてくれって言っても無理ですよ』と」

顧客ターゲット層は、どんな写真に購買意欲をそそられるのか。誰からの情報に心動かされるのか。

ターゲット層の人たちのリアルを知らなければ、SNSでモノを売るコツは掴めない。

にもかかわらず、年齢や役職が上がるほど人は無駄を省くようになり、すべてを会議室で解決しようとする。そして、戦略と実態がどんどん乖離していく。

野村の言葉を借りるなら、「絵に描いた餅では、マーケットは動かせない」のだ。

彼のインスタグラムには、日々さまざまな場所に繰り出す姿がアップされている。年齢や性別や国籍を問わず、色々な人と会い、ランダムに酒を飲む。

「意味があることは大体、無駄な時間のなかにあるんです」

そして、裏方として面白い人やモノや出来事を発信する。野村の生き方は、個の力が求められる時代における、ひとつの象徴ともいえるだろう。

最後に野村に尋ねた。この先、人生の一端を預けてでもやりたいことは何か。

「わからないですね。気が向くままに。でも自分がやりたいと思うことがあったら、人は巻き込んでいきます」


のむら・くんいち/1973年東京都生まれ。学習院高等科在籍中に米テキサスに留学。慶応義塾大学総合政策学部を卒業後、バックパックを背負って世界各国を旅する。99年に辻堂海岸で海の家「sputnik」をプロデュース。2004年には、友人と店舗設計などを手がけるtripsterを設立した。現在は雑誌の原稿執筆から店舗などの設計、企業のブランディング、ラジオパーソナリティまで多彩な仕事を手がける。

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