脳損傷で残った障害改善に光 日米で「再生細胞薬」認可へ前進

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「脳細胞は一度損傷すると再生することはない」という定説を聞いたことがある人は多いだろう。

しかし、再生医療の進展はそれを過去のものにし、多くの人がその成果の恩恵を受けられるのも間近になりつつある。事故などによるからの衝撃で脳が傷ついてしまった状態である「外傷性脳損傷(TBI)」治療に一筋の光明が見えるニュースが入った。

再生医療ベンチャー・サンバイオは19日、同社の再生細胞薬「SB623」について慢性の運動障害が残った慢性期外傷性脳損傷患者への臨床試験で効果が認められたとして米国食品医薬品局(FDA)からRMAT(再生治療先端治療)指定を受けることになったと発表した。

2021年1月までに日本販売開始を目指す同社は、これでいちはやい日米「デビュー」に向けてはずみがつけばと期待を寄せている。

再生細胞薬SB623は成人している健康な提供者の骨髄から採取した幹細胞を加工・培養したもので、脳の神経細胞に投与すると細胞の持つ自然な再生機能を誘発して、回復を促すもの。

そもそも、再生医療においては自分の細胞を活用する「自家移植」に比べ、他人の細胞を使う「他家移植」は拒絶反応の問題がありハードルが高くなっていたのだが、脳に限っては拒絶反応の心配がないことから、サンバイオでは2001年の創業以来、18年にわたって脳の再生にターゲットを絞り研究を進めていた。

SB623は外傷性脳損傷だけでなく脳梗塞の患者にも臨床試験が実施されている。リハビリの効果が頭打ちとなった患者に対して、手足が動かせるようになった、話す機能が改善されたなどの例が報告されている。

このたび同社が指定を受けた米FDAのRMATは日本の厚生労働省による再生医療等製品の先駆け審査指定に似た制度。すでにサンバイオは今年4月に「先駆け審査指定制度」対象品目指定を受けているが、これを受けると指定品目に関する優先審査と迅速承認の機会が得られるという。

今後、同社では2020年1月中に日本での再生医療等製品の「条件及び期限付き承認」申請、2021年1月までの販売開始をそれぞれ目指す考えだ。

縄田陽介

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