自動車専用サイト「カー・グールース」の調べでは、手動ハンドブレーキは10台中わずか3台となったという。レクサス、メルセデスベンツ、ポルシェ、ジャガーなど、多くのカーカーもスイッチ式の電動ブレーキしか採用しないようになった。このままでは、手動ハンドブレーキは絶滅の危機だ。
カーメーカーは全車種を電動ブレーキに付け替える傾向があり、2018年には、その調査によると、手動(ハンド)ブレーキの率は37%から30%に減ったということ。ラインアップの全車に手動パーキングブレーキを提供し続けているのは、スズキとダイハツぐらいだそうだ。
英国のオートモビール連盟(JAFのような組織)のジャック・コーセンス氏は、「この傾向から見えてくるのは、手動システムが電動システムに代わりつつあるということです」と語る。
つまり、手動のハンドブレーキが電動ブレーキに変わると同様に、サイドミラーやシート、またはミニバンのサイドドアなども、だんだんと“手動”が消えていっているわけだ。
「電動ブレーキは確かにいくつかのメリットがあると思います。例えば、上り坂での発進時に、電動ブレーキの方が操作しやすい。もう1つは、手動ブレーキが緩い場合は、上り坂で一番上まで引っ張ってもクルマが下がってしまうケースが多いようです」とコーセンス氏はいう。
メリットはもう1つある。ジムカーナなどのモータースポーツでは、ドライバーがドリフトまたはスピンターンをしたい場合、ハンドブレーキをパパッと丁寧に引っ張ることによって、クルマの向きを簡単に変えられるわけだ。電動ブレーキとなると、そういう細かい操作ができなくなって、ドライビングすること自体がつまらなくなるという人もいる。
反電動ブレーキ派から見ると、こういう電動システムが増えることは、「故障する可能性のあるもう1つのシステムが加わっただけ」だということになる。
もう一つ懸念を言えば、電動ブレーキで運転を習った免許取り立ての人が購入するマイカーの第1号は、手頃な中古車になる可能性が高く、おそらくそれには手動のハンドブレーキがついている。ということは、そういう人はゼロからハンドブレーキの操作を習わざるを得ないだろう。
実は、この手動ハンドブレーキの絶滅危機は、6M/Tのクルマの絶滅危機に例えられると思う。例えば、トヨタには50種以上のラインナップが揃っているが、それに対して、6M/T仕様のある車種は86とヴィッツRSなど3、4台しかない。
やはり、手動ブレーキを引っ張りながら運転することを習った僕みたいなアナログな人間は、電動化が進んでいくと寂しくなる。
だって、正直なところ、CDよりバイナル(レコード)の方が好きだし、6M/Tのクルマの方が楽しいと思う。でも、そういう世界を知らない若者は、電動パーキングブレーキで十分だろう。本当はスローフードの方が楽しくて体にもいいけど、ついついファーストフードを賈うみたいに。
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