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──資産を管理するため、会社を設立する選手も多いと聞きます。

奥村 活躍して高額の年俸をもらうようになると、専門家に管理をお願いするようになります。会社を設立して節税するのは、引退後のことを考えて、資産を残すための対策です。資産管理に対する意識の高い選手は、先のことを考えて対策をとりますが、そこに意識のない人は何もしないまま引退を迎えてしまいます。

とはいえ、専門家に資産管理を頼んでメリットが出るのは、年俸で最低1000万円を超えるくらいからでしょうか。もちろん、どんな専門家に頼むかにもよりますし、生活感にもよっても違いますが。

一方、年俸数百万円レベルだと、資産管理の専門家に対して支払う報酬よりも、節税額が少なくなってしまう。実は、そういう選手が大半なんです。

先輩が奢ってくれる文化の陥穽

──年俸の高い選手は専門家のアドバイスを受けるメリットも機会もあり、年俸の低い選手は助言を受けにくい状況があるのですね。

奥村 お金に対する教育が必要な選手、引退後のセカンドキャリアを考える必要がある層に、専門家が関与しにくい状況ですね。

──球団や選手会は何か対策をしているのでしょうか?

奥村 選手会が新人向けに研修をしてくれます。そこで主に確定申告の仕組みについて習います。ただ、プロ野球選手になったばかりなので、その先の過ごし方のイメージが湧かない。そのタイミングで言われても、実感が持てないし、理解ができない部分もあります。確定申告の方法だけでは不十分で、税金に関する一般的な知識も必要だし、そういうことなしに金銭感覚のバランスがつかめないまま過ごしてしまうのが危険なのです。

もうひとつの問題は、面倒見のいい先輩が奢ってくれる文化です。それ自体は悪くない文化かもしれませんが、そこで自身の収入以上の生活を覚えてしまう。自分の年俸では行けないような高級店へ行く頻度も増える……。その感覚に慣れてしまうと、引退後、身の丈にあった生活に戻すのが大変なのです。

──奥村さんご自身は、現役時代から引退後の資産管理はどうされていましたか?

奥村 僕自身は1年目に入団した時は、定期預金にして積み立てていたんです。でも、オフに入って自由に時間が使えるようになると、積み立てたものを全部取り崩して使ってしまった。親には使わずに貯めておくようにと言われていたんですけどね。使途は、食事代や服代といった遊興費でした。自主トレの費用が足りない、とかではなくて。

2年目のシーズンに入ると、年俸は変わらなくても、住民税がかかるので手取り額が減るんです。でも、オフで遊ぶ感覚を覚えてしまっているから、使ってしまうんですよね。現役選手の多くは、来年稼げばいいやっていう、右肩上がりの未来しか見えていないんです。

右肩上がりのイメージしかない現役時代

──プロ野球選手として現役時代、引退後をどのようにイメージしていましたか?

奥村 いつか引退する日が来るというのは、うっすらといつも意識にあるんです。僕自身は、引退後に野球関係以外のことをすることは全く想定していなかった。

プロ野球という憧れの世界に入り、コーチになり、監督になり、解説者……というバラ色のストーリーを描いていましたね。成長して稼ぐイメージはあっても、それがダメになることは想像していませんでした。

取材・文=Forbes JAPAN編集部 写真=山﨑裕一

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