ビジネス

2019.09.18

グーグルにも絶対「アキレス腱」はある。そこにチャンスが存在する|慶應義塾大学 國領二郎

慶應義塾常任理事を務める國領二郎教授


──なるほど。今、自動運転についてお話がありましたけど、そういった見方をすることで、他にもチャンスがたくさん転がってそうですね。

弱者が強い敵を相手取るには、言い方は少し乱雑ですが「相手のアキレス腱となる箇所を探して、蹴り飛ばす」というのが戦い方の定石です。

例えば日本企業は過去に、世界の自動車産業のアキレス腱を思い切り蹴り飛ばしましたよね。1970年代、欧米ではパワフルなエンジンを積むことで、豪華さと乗り心地の良さを実現する車が全盛でした。そんな中、石油などの資源を持たない日本が、小さなエンジンの軽自動車にエアコンを積んでオートマティックで走らせるという離れ業をやってのけた。それがオイルショックという追い風も吹いたおかげで、一気に形勢逆転し世界を席巻したわけです。これは強さが弱さに変わった典型的な瞬間です。

視点を変えて見てみると、パソコン産業は自動車産業に近いようにも見えます。

CPUの容量は加速度的に進歩するものの、それを使うソフトウェアがついていけていなくて、結果的にソフトウェアに無駄が多くてもCPUが大きいので動いてしまう。そうすると、日本お得意の徹底的にすり合わせて無駄を減らして……というやり方は逆に弱みになってしまっています。

──でもムーアの法則も終わろうとしています。

その考え方が重要なんです。

ムーアの法則が成立している時代には圧倒的に強かった相手が、止まった時にどういう弱みを露呈してくるか。その弱みの部分に今のうちに狙いを定めて、投資しておけばいいんです。

──確かにおっしゃることに納得できる一方で、漠然とした疑問も浮かんできます。大企業とは言っても、特にインターネット企業は組織としてのあり方が過去とはだいぶ異なるのではないでしょうか。強いけど柔らかい、というか…。例えばグーグルの「システム」は覆るかもしれないけれど、グーグルという「組織」は覆らないのではないか、というイメージです。

確かにそうかもしれませんね。

逆に経営者視点としては、それを目指すべきですよね。未来永劫続くものなんて無い、という前提で、いかに自身を革新し続けられるか。

とはいっても、私はグーグルにも絶対「アキレス腱」はあると思ってますけどね。
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文=小縣拓馬 提供元=Venture Navi powered by ドリームインキュベータ

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