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23アンドミーが提供する検査の中で最も物議を醸しているのは、一般に「アンジェリーナ・ジョリー遺伝子」と呼ばれているBRCA1と、それに関係する遺伝子のBRCA2において、乳がん、卵巣がん、前立腺がんに関連付けられている3つの変異を調べる検査だろう。

検査の批判者によると、問題は、乳がんに関連付けられている変異は1000以上あり、そのうちの3つのみを調べても、リスクの全体像を提示できないことだという。その上、23アンドミーが検査する3つの変異は、通常はアシュケナージ系ユダヤ人の血を引く人々の間で見つかるもので、彼らの米国での人口は全体の2%。つまり、ほとんどの人にとっては無関係なのだ。

「それほど役にも立たなければ、それほど害もない技術だということです。であれば、私たちが本当に行うべきなのは、200ドルを費やして23アンドミーの検査を受けることでしょうか。それとも、ジムの会費に200ドルを費やすべきなのでしょうか」。ノースカロライナ大学の臨床遺伝学者、ジョナサン・バーグ医学博士はそう問いかける。

フィットネスマニアのウォジスキなら、間違いなく遺伝子検査とジム通いの両方をやるべきだと言うだろう。ともあれ、検査の信頼性を高めるために、ウォジスキは先ごろ、英国に拠点を置く巨大製薬会社「GSK」(グラクソ・スミスクライン)と23アンドミー史上最大の取引を結んだ。GSKに自社の遺伝子データベースへのアクセスを与える内容で、このデータベースには推定800万人のDNAが収められている。「この規模のデータセットなら、小規模なデータセットでは決して明らかにできない数多くの創薬標的の兆候を見つけることが可能になります」と、GSKの最高科学責任者のハル・バロンは語る。

より近い将来に利益をもたらすための施策として、ウォジスキは検査後の健康アドバイスの提供に光を見ている。しかし競合はいくつも存在する。アンダーアーマーからアップルに至る各社が、禁煙アプリや食生活や運動量のトラッキングツールなどのサービスを投入しているからだ。

こうしたヘルスケアアプリがひとつでも効果を発揮するのか、あるいは23アンドミーがほかのプレーヤーに比べて優位に立てる部分があるのかについて、まだ結論は出ていない。

「医薬品の効果を数値化するほうがはるかに簡単であり、予防の効果を数値化するほうがずっとむずかしい。ですが、私がより誇りに思うのは、予防の効果です」とウォジスキは言う。 「なぜなら、今の時点では誰もそれが可能だと思っていないからです」


アン・ウォジスキ◎1973年、アメリカ生まれ。96年、イェール大学卒業、ウォールストリートでのアナリストを経て、2006年に遺伝子解析の「23andMe」を共同創業。07年に結婚、15年離婚。子供はふたり。

文=ビズ・カーソン&キャスリーン・チャイコフスキー 翻訳=木村理恵 編集=杉岡 藍

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