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23andMe創業者兼CEO アン・ウォジスキ

アン・ウォジスキ(45)率いる、評価額25億ドルの遺伝子検査会社「23アンドミー」。 同社はいま、ビッグデータとビッグファーマを結ぶ、“次の段階”に進もうとしている。


アマゾンでも買える手のひらサイズの遺伝子検査キット、「23アンドミー」。これまで約1000万人が小さじ半分程度の唾液を同社に郵送し、自分のルーツと祖先、そして健康リスクに関する情報を手に入れてきた。その数は昨年だけでも500万人に上り、いまだに利益を上げたことのない同社に推定4億7500万ドルの収益をもたらした。投資家は同社に25億ドルの評価額をつけている。

ウォジスキの推定保有資産額は6億9000万ドル(「米国セルフメイド富豪女性ランキング100」の33位)。そのほぼすべては、全体の約30%に相当する23アンドミーの持ち株からなる。

ここまでの成功を収めるまでに、ウォジスキはすべてを失うかもしれなかった“ひどい年(アナス・ホリビリス)”を乗り越えている。グーグルの共同創業者である元夫のセルゲイ・ブリンと別居に至った2013年は、23アンドミーが米国食品医薬品局(FDA)によって健康リスク検査の販売を即刻停止させられた年でもあった。また、23アンドミーを“ビリオネア妻の娯楽”と見なす人々に立ち向かうべき年でもあった。

結婚生活が過去のものとなり、23アンドミーが紛うことなき本格的な事業であることを証明したいま、ウォジスキは再び転換点を迎えている。

まず、彼女はひっそりと第3子を迎える準備を進めてきた。今回はひとり親として。 「交際相手の有無によって、子どもをもてるか否かが左右されるべきではないと思います」とウォジスキは言う。「私はとても頑固。何かやりたいことがあったらやり遂げます。3人目が欲しかった。だからどうしたと思います? 実行に移したんです」と笑う。

また、23アンドミーCEOとしては、同社のもつ巨大なDNAライブラリ(世界最大の遺伝子研究データベースだ)を活用し、疾病リスクの有無を判定するだけでなく、その治療薬の創出までを手がける「バイオテック・マシン」に同社を組み換えようとしている。

このアイデアの見事なところは、すべてが計画通りに進めば、23アンドミーはその両面で稼げるという点だ。顧客は自分の遺伝子データを知るために同社に費用を払う。同社は顧客の遺伝子データを使い、いつか生まれる可能性のある新薬からも利益を上げるのだ。23アンドミーの顧客の80%は、自分のDNAを医学研究に使うことに同意している。

予防医療に目覚めたシリコンバレーの申し子

ウォジスキは、父親のスタンレーが物理学教授を務めていたスタンフォード大学の構内で育った。母親のエスターは、パロアルトの高校でジャーナリズムを教えていた。エスターは3人の娘たちに、どれだけ早い時期から“あらゆる物事”を教えられるかということばかり考えていたという。“あらゆる物事”の範囲は、よちよち歩きのうちから水泳をさせることから、花のラテン語名を教えることにまで至る。「娘たちを教育の実験として使ったのです」と、エスターは18年にフォーブスに語っている。

文=ビズ・カーソン&キャスリーン・チャイコフスキー 翻訳=木村理恵 編集=杉岡 藍

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