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2019.09.26

ニュースメディアの危機か、広告主が気にするネットの「禁句リスト」 

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ちなみに、禁句をブロックできるアルゴリズムを開発しているダブルベリファイ社のクライアントは、たった3年前には50社にも満たなかったのが、今は4倍の177社に上っているという。同社のサイトを見れば、ブランド・セイフティーだけでなく、広告主が虚偽の閲覧報告データで「ぼったくり」にあわないよう、監視をするサービスもクライアントに提供しているという。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、この禁句リストのほんの一部を紹介しているが、そこには、死亡、射撃、殺人、銃、レイプ、爆弾、死去、攻撃、殺された、自殺、衝突、犯罪、爆発等の言葉が続き、これを見ただけでも、これらの使用を避けるなら、当然ニュースが成立しないのは容易に推測できる。

ちなみにCNNによると、禁句リストは数百程度ならざらで、現在は1000を超える禁句リスト持つ広告代理店との取引もあるといい、悲鳴をあげている。ちなみに、この半年で最もブロックされたのが、「トランプ」という単語で64万回にも上るという。

言論の自由の危機か

かつては「報道」こそ、メディアの看板中の看板、その権威と歴史を提供することで高い広告料を取れるものであったが、今日、ネットにおいてはその地位は逆転し、報道が取れる広告はどんどんなくなっている。

このままではネットのニュースメディアが成立しなくなると、発信する側も対策を考えていて、CNNは、そのニュースコンテンツが、読者にとってネガティブかポジティブかそれとも中立なイメージを与えているかという事を診断するソフトウェアを発注。これが出してくるスコアによって、「単に禁句ではなく、文脈でコンテンツを理解し、広告を出してくれるように」広告主を誘導していくようだ。

とはいえ、人間社会そのものはもともと理想郷からかけ離れたところにあり、人間の歴史がそういう「暗黒」や「失敗」を繰り返してきたのを認識し、「見つめる」ところから人類は日々、学んでいる。自らの中にも存在しうる「悪」を見つめてこそ、善への一歩ではないのかと思う。

そうであるならば、読者のポジティブやネガティブという感想だけで、ニュースに評価が下されるようになるのは、言論の自由が間接的に奪われていくようで心配になる。

CNNやUSA Today等は、近年広告が取りやすい生活・文化欄やテクノロジー、ビジネスやスポーツ欄のコンテンツを増やしているというが、果たしてそんなことで、いいのだろうか。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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