進化するプロバイオティクスと期待される「生きた薬」の開発

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二日酔いを防ぐことができる錠剤があったらどうだろう? 病気になった細胞の組織だけを標的とする薬があったら?──これらはプロバイオティクス(宿主に好影響を与える生きた細菌)によって、実現が可能だとされてきたものの一例だ。

私たちのマイクロバイオーム(腸内細菌叢)は、自然の驚異だ。人間は誰でも、何百兆個もの微生物と共に生きている。私たちの口腔内や腸内、皮膚には数千種類の細菌やアーキア(古細菌)、菌類、ウイルスが常在している。

マイクロバイオームは、人間の健康を維持するために不可欠なものだ。例えば、腸内細菌は人間の健康のほぼ全ての側面に関与しているとみられている。アレルギーや関節炎、ぜんそく、自閉症、結腸がん、一部の感染症、糖尿病、炎症性腸疾患、肥満、その他のさまざまな疾患に関連しているとされる。

プロバイオティクスの効果

プロバイオティクスについて、聞いたことがある人は多いだろう。食べたことがある人も多いはずだ(例えばヨーグルトなど)。「ラクトバチルス」や「ビフィドバクテリウム」といった細菌はすでに何十年も前から、ヨーグルトや錠剤、粉末のサプリメントなどに使用されてきた。

ただし、食料品店の棚に並べられ、誰にでも効果があると説明されているプロバイオティクスのサプリメントが、期待どおりの効果をもたらすことは少ない。その一方で、どのように機能しているかまだ全面的には解明されてはいないものの、キムチやザウアークラウトなどの発酵食品は、ほとんどの人の腸の健康に効果的だとされている。

全身ではなく特定の組織や細胞を標的として細菌をつくり、副作用の発生を防ぎ、プロバイオティクスを全く新たなレベルにまで引き上げることができたとすれば、どのようなことが起きるだろうか?

合成生物学の進歩

マイクロバイオームに関する理解が深まってきたことで、細菌を人間の健康に役立てようとする企業はますます増加。すでにいくつかの企業が、合成生物学を活用することによって、新製品を開発している。
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編集=木内涼子

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