ブロックチェーンで「正義」が保証される世界をつくる──イーサリアム財団トップ女性の哲学とは

イーサリアム財団エグゼクティブ・ディレクターの宮口礼子


──難しいチャレンジですね。

財団の運営についてもいろいろ言われますが、どこまで頑固に貫けるか。声を荒げるのではなく、静かな強さが必要です。

インターネットが登場する以前は、コミュニティが機能し、お互いに支え合って生活していたはず。貧富の差や教育格差などの社会問題は、テクノロジーが起こしたネガティブな側面だと思うんですね。

でも私は、社会がおかしくなったのではなく、それまであったバランスが崩れてしまったのだと捉えています。バランスが崩れた要因の半分はインターネットのせいかもしれません。でも最初にインターネットを作った人たちは、「インターネットで世界を平等にする」というような逆のことを考えていたはずです。

私はその崩れてしまったバランスを戻せるのが、ブロックチェーンだと思っています。

日本人の持つプロジェクトマネジメントスキル

──ブロックチェーン業界で、女性は珍しい印象があります。ご自身のポジションについて、どのように考えていますか?

私が飛び込んだアメリカのスタートアップ業界は、既成概念にとらわれず、個人の能力を評価する文化なので、男女差を感じることは少ないですね。

「日本人女性はいろいろと気が利く」みたいなイメージを持たれていたかもしれませんが、個人を評価してくれる環境だと思います。

ただ、アメリカに来たばかりの頃は、「日本人だから◯◯」みたいな評価をされるのは嫌でしたね。日本人だからではなく、私自身の評価で雇ってほしいと変に頑固になっていた気がします。

逆に今は、女性であることも、日本人であることも、自分のアイデンティティだと思えるようになりました。日本人だから伝えられることがあるし、日本を離れたからこそ、日本の人たちに伝えられることもあります。

──日本人の性質として、どんなことが活かせると思いますか?

日本にいると分からないですが、日本人の基礎能力は高いと思います。特に与えられた仕事を時間内にこなす能力が高いですね。これは大人になってからトレーニングしても、できるようになりません。

MBAでさまざまな国の人と一緒にプロジェクトに取り組んでいたとき、「デッドライン」の感覚が日本人とは異なることに気づいたんです。日本人にとっては「DEAD LINE」、これを超えたら死ぬよ、と言っていたんですが(笑)、彼らにとっては「だいたいこのくらい」みたいな感覚で、デッドラインを超えても許されるんですね。

日本人は全員できて当たり前に思うかもしれませんが、時間内に仕事を終えられるだけで、アメリカでは「プロジェクトマネジメントスキル」として評価されます。これには驚きました。

一方、日本では昔から、自信があるように振る舞うことを良しとされない文化があります。海外では仕事をアサインされると、まず「いくらもらえますか?」と交渉しますが、日本ではまず実績を作り、貢献したら認めてもらえると信じていますよね。

海外では、実績がなくても自信をもって交渉する人が多いですが、日本人には難しいんだと思います。

でも、プロジェクトマネジメントスキルが後天的に身につけるのが難しい一方で、自信は後から身につけられます。自信と謙虚さのバランスを上手く取れるようになれば、日本人はもっと活躍できるはずです。
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インタビュー=谷本有香 構成・文=筒井智子 写真=小田駿一

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