ブロックチェーンで「正義」が保証される世界をつくる──イーサリアム財団トップ女性の哲学とは

イーサリアム財団エグゼクティブ・ディレクターの宮口礼子


──貧困層のサポートなど、宮口さんの活動には揺るぎない理念があるように感じます。一番大切にしていることは何ですか?

昔から自分の中には変な正義感があるんです。もともと、早生まれで身体が小さいというコンプレックスがあったので、弱いものに対して「守ってあげなければ」という意識が強いんだと思います。

根底にあるのは父の影響です。父はすごく頑固な人で「医者だからといって、言っていることが全て正しいとは限らない」というタイプ。私も「たくさんの人が言っている=正しい」とは思いませんし、みんなが憧れるような起業家に会う機会があっても、自分が興味なければ「だから何?」と思ってしまいます(笑)。

大勢だからといって良しとしない、企業のトップに会っても萎縮しないのは、イーサリアムのフラットな組織や反体制的な価値観とも共通しています。

──そういう意味では、イーサリアムも天職なのでは。高校教師が天職だと言われたのは、なぜなんですか?

教師が天職だと言われて気づいたのは、自分が学生のとき、教師に対して納得いかなかったことと逆のことをやってきたということ。さまざまな場面で「自分だったら、こう言われないと納得いかないな」と考えて、伝えてきました。

たとえば、校則で「茶髪はNG」というルールがありました。ハーフで地毛が黒くない生徒も多い学校だったのに、ナンセンスですよね。もちろん生徒たちもルールを守りません。

そのとき私が生徒たちに伝えたのは、教師はサービス業で、生徒がクライアント。ルールを変える権利があるのはあなたたちだ、ということでした。本当にルールを変えたいなら、自分たちで立ち上がって変えるべきです。

学校は誰かに押し付けられて行くところではなく、あくまで自分で選んで来ているはず。嫌なら来なければいい。来ることを選んだのなら、ルールは守るか自分で変えるしかありません。行動せずに文句を言っても仕方ないよ、と伝えていました。

──その当時から自律分散的な考え方だったんですね。まさにブロックチェーンそのものというか。

自分でも不思議ですけどね(笑)。

イーサリアムのコミュニティは若い人が多くて、私が年長者。まるで教師に戻ったような感覚なんです。財団は非営利なので、ボスと部下の関係というより、学校の教師が生徒会で活動するよう促すみたいなやり方。本当に全部つながっていますね。
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インタビュー=谷本有香 構成・文=筒井智子 写真=小田駿一

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