超高齢化社会において、どの会社も中高年社員が増えていく傾向が止まらないのは事実であるが、彼らは本当に働かないのか? 本当にお荷物なのか?
若手・中堅社員の人材育成手法が出尽くした今、新たなマーケティングの開拓先としてシニア社員にターゲットを当てられているように感じる。
実際、私がこの5年間で1500人を超える50歳代の社員と面談をしてきた中で、「働かない」「お荷物」とレッテルを貼るのは間違いだと確信している。
私がベテラン社員とキャリア面談を始めた2014年は、年金支給開始時期が段階的に60歳から65歳に延長された時期であり、形態こそ様々ではあるが企業に継続雇用が義務付けられた年であった。
この時の50歳は「あと10年頑張れば」と思っていたところ、それが一気に1.5倍に延びたことでうんざりする人が多かった。また、60歳の定年後は、年金とほぼ同額しか支給されない賃金の会社の再雇用制度に頼ること以外、選択肢は見当たらないという社員ばかりだった。
大企業に約40年も勤めたのに、60歳でハッピーリタイヤできるほどの貯えがある人はほんのひと握りでしかないことも明らかになった。
つまり、2014年当時のベテラン社員は加齢により能力が衰えたのではなく、社会保障の変化による「うんざり」という気持ちが仕事ぶりに影響してしまっている人が多かったのである。
2018年秋、政府は年金の支給開始時期を65歳から70歳への繰り下げを検討開始した。65歳への繰り下げを決定してからわずか4年後のことだ。2014年時点との違いは、企業に対する70歳までの雇用延長義務化や社会保障が極めて曖昧になっている点だ。国もそれなりの手は打ってくるだろうとは思うが、今の中高年社員は不安を感じている。
では、2018年になってうんざりする社員がさらに増えたか? と問われると、答えは「No」である。極めて短期間のうちに、年金支給時期が2回も延びたことで、ベテラン社員たちの考え方は如実に変わってきている。
私が「将来、どういう時代が来ると思いますか?」と問うと、「もう社会保障はあてにできない」「65歳以降、会社が雇用継続してくれたとしても、さすがに65歳までと同じ賃金は払ってくれないだろう」などと、自立心を感じさせる回答が増えてきている。
中には「住宅ローンが70歳まで残っているので、それまではどこかで働くつもりだった」とか「下の子どもがまだ4歳。大学を出るまでに18年あるから、65歳以降の3年間、どうしようかと思っていたけど、働き続ける決心がついた」など、前向きな声もある。もし、会社に70歳までの継続雇用義務が課せられるのであれば「むしろラッキー」とさえ言う人も登場した。