この数年間で年金支給開始時期が10年延びようとしている。今、50歳。70歳までにはまだ20年ある。その間、まだ延びるかもしれない。「何歳から」と言うよりは「そう簡単に年金はもらえない」時代になったと認識することで、60歳以降の働き方を積極的、能動的、自主的に考えるようになったのである。
50歳社員が自律的に考え始めた60歳以降の新たな働き方として代表的な2つの事例を紹介しよう。
ひとつは60歳で定年になった後、会社の再雇用以外の道を模索する働き方。「会社の再雇用は賃金が大幅に減る。今もらっている賃金は期待しないが、会社の再雇用よりは高い賃金で働くことはできないだろうか? それに、会社の再雇用制度では今のところ65歳までしか働かせてもらえない」と考えるものだ。
賃金の低さはもちろんのこと、「65歳まで」という期限をリスキーと捉える。70歳まで、あわよくば働けるうちは働き続けられる道を選択したい。
そこで、「50代のうちに何をするか?」が重要になってくる。それは、少しでも高く雇ってもらうため、自ら市場価値を付けることである。賃金の良いところに再就職が叶わなかったときには、会社の再雇用制度を保険とする選択肢も残す。50代で自分を高く売るためのスペックを身に付け、60歳で別の会社に再就職することにチャレンジしない手はない、と言うわけだ。
もうひとつは副業を組み合わせていく考え方。現役のうちに副業を始め、60歳になったら会社に再雇用されるが、週3日勤務とか1日6時間勤務といった時短勤務を選択し、空いた時間を副業に充てる。そして、65歳以降はそれを本業化し、70歳以降も働き続けるという図式である。
このように、年金支給時期がどんどん延びていく時代に突入したことにより、ニュータイプのベテラン社員が増殖し始めている。ポイントは60歳以降、新たな道を選択するにしても、副業で稼ぐにしても、一定以上の「スキル」が求められることだ。そうしたスキルを付けられれば、現役中に活躍できる機会が増えることになるだろう。
このようなニュータイプは2014年の時点では100人に1人ぐらいしかいなかったが、今では10人に1人にまで増えてきている。だが、私が面談を行っているベテラン社員だけに絞れば、その数は2割に達する勢いだ。
モチベーションが落ちて成果が出せなくなったシニアがいるのは事実。しかし、70歳年金支給開始を見据え、50代のうちにスキルを磨くことでそうした社員は再生できる。ベテラン社員は時代の変化に付いていけないほどやわではない。すぐに時代にアジャストできる存在でもあるのだ。
連載:「50歳の壁」を超えるキャリア思考術
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